製造業におけるボトルネックとは? 製造業にとってボトルネックは永遠の課題!
ボトルネックの由来は、ビールやジュース、ワインなどのボトルで、上の方が細くなっているあの部分から来ていると言われています。
飲み物の場合、このボトルネックのおかげで中身が一気に出ずに、注ぎやすく、飲みやすい量が一定に出るというメリットがあります。しかし、製造工場では異なります。ボトルネックが発生すると、その部分で作業が詰まり、生産効率が落ちてしまうからです。今回は製造業とボトルネックについて解説します。
ボトルネックとは
ボトルネックとは、全体に影響するレベルの問題要因で、最も問題視される箇所のことです。水の入ったビンに物を入れると、ビンの首元で物が詰まって水の流れを邪魔することから名付けられたとされています。
ビジネスシーンでは、全体の作業工程を最も低下させている場所を指す言葉として使われ、「制約条件」などと呼ばれることもあります。
たとえば、コンピューターの分野で障害や問題が発生した際の原因、システム処理や通信のスピード低下の原因や要因がボトルネックに当たります。
また製造業では、いくつかの生産工程のうちでスピードが遅いなど生産率を下げているというような、全体の作業工程のうち処理能力や容量が一番小さい部分を指します。
製造業とボトルネック
製造業は以下のような工程を経て商品が作られます。
・設計
・材料調達
・加工
・検査
・出荷
短納期で高品質なものを安く作ることを求められた場合、どれか一つの工程でも問題が発生すると致命的となります。そのため、製造業にとってボトルネックは常に問題視されています。
ボトルネックの見つけ方
ボトルネックは生産性に大きな影響を与えます。たくさんある製造工程の中でボトルネックとなる工程は以下の項目をヒントに見つけることができます。
・仕事が停滞している場所はどこか
・稼働率が高い工程はどこか
・ラインの中で最も作業時間が長い工程はどこか
・よく問題やトラブルが発生する工程はどこか
稼働率が他と比べて高い工程と聞くと、良いのではと思いますが、言い換えれば他の工程のスピードに追いつけていない工程となるため、ボトルネックの可能性があります。
改善策として「ピッチダイアグラム」という、各工程の作業時間を棒グラフにまとめたものを作成すると、作業時においてボトルネックの発見や判断、ラインの改善案がわかりやすくなります。これをうまく利用して、ボトルネックを発見し、解消しましょう。
生産ラインのボトルネック
作業工程だけでなく、生産ラインがボトルネックになる場合もあります。
以下のような工程があったとします。
A工程:生産量500個/1時間
B工程:生産量250個/1時間
C工程:生産量500個/1時間
工程Aで1時間に500個作っても、常に250個が仕掛品として在庫の山となる。
工程Cは1時間に500個作る能力があるが、工程Bから250個しか流れてこない。
そのため、この工場では前後の工程の能力が高くても1時間で250個しか生産できず、工程Aを10時間フル稼働させてもB工程で詰まるため、1日で2,500個の仕掛品ができ、無駄な在庫となります。
この場合、工程Bがボトルネックです。
生産ライン以外のボトルネック
ボトルネックになるのは生産ラインだけではありません。仕入れすぎや作りすぎもボトルネックを生む原因となります。材料の仕入が多いと工場自体がボトルネックになります。
仕入自体がボトルネックになる
1つ目は「需要自体がボトルネックになる」ことです。
以下のような工場の生産能力を超える仕入をした場合、半数が在庫になります。
・1日分の仕入:10,000個
・工場の生産能力:5,000個/1日
安全在庫を超える余剰在庫レベルの在庫は明らかに買いすぎの状態であるといえます。
需要自体がボトルネックになる
2つ目は「需要自体がボトルネックになる」ことです。
製品の生産量が多い場合、供給過剰となり、最悪廃棄処分となります。
・工場の生産能力:5,000個/1日
・工場の需要は2,500個/1日
市場でそれほど需要がないのに工場が5,000個作っても、需要が2,500個なので残りの2,500個は在庫となります。
ボトルネック解消のコツ
ボトルネック解消のコツは以下の通りです。
固定観念を捨てる
1つ目は「固定観念を捨てる」です。
長期間やり続けてきた方法が正しいとは限りません。固定観念を捨てましょう。
見直しの例は以下の通りです。
・全体の工程の作業手順
・各部署の役割と仕事内容の範囲
・社員や派遣の人数
・チェック方法
仕組みを改善する
2つ目は「仕組みを改善する」です。
作業をする時、やり方を考えて早くなるよう努力することは大切です。しかし、もっと広い視野で仕組みから改善しなければボトルネック解消にはなりません。
原因を徹底的に追及する
3つ目は「原因を徹底的に追及する」です。
たとえば、溶接の工程でいつも仕事が止まるということは、ボトルネックは溶接工程でしょう。溶接工程がボトルネックになるのか考えられる原因は以下の通りです。
・人数が足りない
・場所が足りない
・次の工程との連携がうまくいっていない
原因を調べると、実は設計ミスや生産管理の手配ミスが多かったからという場合があります。生産管理におけるボトルネックとは、作業や工程において能力や容量の一番低い、仕事が詰まってしまう場所を指します。
この場合、溶接ではなく設計や生産管理に焦点をあてて改善しなければいけないので、原因は徹底的に追及しましょう。
ボトルネックの解消方法
ボトルネックの解消方法は以下の通りです。
工程の能力・許容量を上げる
1つ目は「工程の能力・許容量を上げる」ことです。
ボトルネックを正確に見つけ、機械や人を投入することでボトルネックを解消し、生産性の向上につなげる事ができます。ただし、機械や人員導入にはコストがかかるため、作業スペースの確保などを考慮しなければいけません。
工程の段取りを改善し、時短・効率化を検討する
2つ目は「工程の段取りを改善し、時短・効率化を検討する」ことです。
歩留まりの向上やゾーニングを工夫することで効率化を図り、工程の時間を短縮できるように検討することで、ボトルネックの軽減が期待できます。
工程の段取りを改善し、時短・効率化を行えば、工程の能力と許容量をあげることと組み合わせることで1.5倍の生産効率になるでしょう。
工程内での処理内容を分配する
3つ目は「工程内での処理内容を分配する」ことです。
工程内での処理作業数が多い場合、工程内作業を他の工程に移動させ、その工程内の作業を減らすという方法です。ピッチダイアグラムを使えばわかりやすくなるでしょう。
ただし、一度割り振った作業内容を再分配することは、必ずうまくいくわけではありません。元々の作業内容はすでにある程度の制約の中で組まれているはずですので、実際にうまく再分配できるかどうかよく検討しなければいけないでしょう。
ボトルネック解消の具体例
とある板金加工会社の場合、以下のように流れていました。
①営業が受注
②設計
③生産管理が工程決め
④材料手配
⑤生産技術が展開、現場用プログラム作成
⑥機械による抜き工程
⑦バリ取り
⑧抜き
⑨曲げ
⑩溶接
⑪塗装(以下省略)
上記の工程で、常に仕事が止まって放置されていたのが溶接です。
溶接では曲げ工程や抜き工程に比べて一つ一つの作業に時間がかかる事を考慮しても、手つかずの状態があまりにも多い状況でした。
原因を追求してみると以下の事がわかりました。
・ミスが多くて何度もやり直している
・展開作業者のスキルに差があるので溶接の手間が大幅に増えている
・溶接の作業者が展開作業者に指導をするので作業が止まる
・生産技術がチェックなしで現場に流している
原因は生産技術の展開、プログラム作成が大きなロスを発生させているというものでした。
ボトルネックの解消として、生産技術の展開作業を2人1組で必ずチェックしてから現場に流すようにしました。これによる成果は以下の通りです。
・ミスが大幅に減少
・ベテランと若手の展開方法が統一
・溶接作業者が直接クレームを言うことが減った
・材料の再手配なども減少
チェックをすることで生産技術の工数が1.5倍増えましたが、それ以上に材料代や溶接以外も含めての工数削減、製品の統一性という成果が現れました。
ボトルネック解消後の注意点
ボトルネックは改善することではなくなりますが、その代わりに他の工程が新たなボトルネックとなり、工場の生産性はその新たなボトルネックに影響を受けるようになります。
そのため、「ボトルネックは改善を重ねていくほど移動していく」ということを頭に入れておきましょう。
一つのボトルネックを改善して終わりではなく、常に新しいボトルネックを改善していくことは生産管理の永遠の課題と言えるでしょう。根気よく解消し続けることで、会社の利益に貢献しましょう。
まとめ
製造業とボトルネックについて解説してきました。以下、まとめになります。
・製造業のボトルネックとは、全体の作業工程のうち、処理能力や容量が一番小さい部分のことを指す
・ボトルネックは生産ラインや仕入、供給過多など工程以外のことも含まれる
・1つのボトルネックが解決すると、また次のボトルネックが現れるように、製造業にとってボトルネックは永遠の課題
ボトルネックを解消せずに放置していると、時間のロスとなり、競合にどんどん追い抜かれてしまうでしょう。ボトルネックは原因が生産ライン工程なのか、買いすぎか、作りすぎかなど、徹底的に洗い出し、各工程の作業時間を棒グラフにまとめた「ピッチダイアグラム」を作成、データを可視化することで解消することができます。ピッチダイアグラムによって、作業時におけるボトルネックの発見や判断、ラインの改善案がわかりやすくなります。改善し、無駄を省いていくことで、より生産性が向上し、会社に貢献することができるでしょう。