製造業のCO2排出量を削減するために企業がやっていること!省エネ補助金をもらって地球に優しい事業をしよう
日本において製造業の二酸化炭素(CO2)排出量は全体の28%を占めています。
鉄鋼業、化学工業、機械製造業、窯業・土石製品製造業、パルプ・紙・紙加工品製造業、食品飲料製造業からの排出量が大きく、製造業全体の9割程度を占めています。
どのような対応を取る事によってCO2削減になるのでしょうか。今回は製造業とCO2削減について解説します。
パリ協定とは
世界各国でCO2削減に励む背景として「パリ協定」があります。 パリ協定とは、2020年以降の地球温暖化の対策として、 第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の開催地パリで採択された協定のことです。 具体的には、先進国・発展途上国を問わずすべての国が協力し、 地球の気温上昇を抑えようとする、国際的な取り組みです。地球温暖化を目指し、温室効果ガスの排出目標が159ヵ国・地域で締結されました。
・21世紀後半には、温室効果ガスを実質ゼロにすることを目標
・加盟国は、5年ごとに削減目標を見直し、国連に報告することが義務付けられている
・取り組みが不十分であるとみなされた場合、罰則はないものの、 国際的なプレッシャーを受ける可能性あり
日本は2013年に、CO2排出量の削減目標を 「2020年度に、2005年度比で3.8%減」として提出しました。 しかし、この数値は目標が低いどころか「むしろ1990年からの増加を肯定している」と各国から批判を浴びてしまいました。そのため、 2015年7月に再度「2030年度に、2013年度比で26%削減する」という削減目標を提出しました。 原則、一度提出した目標値は引き下げることができないため、 日本政府は、目標達成のために各業界に対してCO2削減の努力を強く求めているのです。
製造業のCO2排出量を削減するには
製造業におけるCO2排出量を削減する事は、使用されているエネルギーの量を削減する事とほぼ等しいと言われています。そのための工程は以下の通りになります。
・工業プロセスを動かすのに必要なエネルギーを削減・節約
・システム内のエネルギー損失を削減
・ボイラーやモーターなどのデバイス効率を上げる
・無駄に使われているエネルギーを有効に使えるようにする
工業プロセスを動かすのに必要なエネルギーを削減・節約
一般的な工場でよく利用されているポンプシステムのエネルギー消費は、約10分の1に減少します。つぎ込んだエネルギーが100単位なのに対して実際サービスに使われるエネルギーは9.5単位しかないのです。
つまり、最後に必要となるエネルギーが1単位削減できれば、元の投入エネルギーとしては10単位程度削減する事が可能となります。そのため、常に末端での利用を最小限に節約できないかと考える事が、必要なエネルギー減少において重要となってきます。
システム内のエネルギー損失を削減
一般的にパイプは伝統的に直角配管が好まれ、費用は作業時間で払われるため長い方がよく、余分のパイプと継ぎ手で利益も出せるという背景があり、このような非効率な設計がずっと続けられてきました。インターフェース社は、ポンプシステムのポンプとパイプでの損失がないように変えることで必要なエネルギー量を13%程度にまで減らしました。そのために行ったことは2つです。
①太いパイプと小さなポンプを採用
②パイプの配置を摩擦の少ない配置にしたこと
太いパイプの場合、コストは直径の2乗に比例して大きくなりますが、摩擦は直径の5乗に比例して下がります。そのため、エネルギー効率を優先するために下げられました。
また、パイプは直角に接続されることが多く、摩擦を増やす原因となるためなるべく摩擦の少ない角度で接続するようにしました。
ボイラーやモーターなどのデバイス効率を上げる
モーターは工業向け電力の5分の4を使うと言われています。多くのモーターは必要以上に大きく、エネルギーの無駄遣いをしています。回転数を変えることができるモーター制御を追加するだけで、そのエネルギー消費量は15~30%削減する事ができます。
回転数を制御するインバーターの導入によりエネルギー消費量が大きく削減できたと、環境省が出している製造業の温室効果ガス排出抑制等指針の中にも掲載されています。
無駄に使われているエネルギーを有効に使えるようにする
製造業では、一度加熱したものを廃棄するために冷却し、処理する場所が違うため移動したあと再加熱するなど、無駄になるエネルギーが多いのが現状です。
エネルギーを無駄にしないために、最も効率的と言われているのが熱電併給(CEP)です。CEPとは、発電に付随して出た大量の熱を捕捉するというものです。
このように、無駄がないか見直すことによって、製造業でのエネルギー消費削減に繋がり、CO2排出量削減に繋がっていくのです。
エコ企業がCO2削減のために、実際に取り組んでいること
コニカミノルタ株式会社は「第22回環境経営度調査2019企業ランキング」で製造業部門1位を獲得しています。明日からオフィスですぐに取り組むことができて、すぐに行動に移せるCO2削減が選ばれた理由でしょう。
コニカミノルタ株式会社が行った取り組みは4つです。
①エコビジョン2050を策定
②製品ライフサイクルにおけるCO2 排出量を「2050 年までに 2005 年度比で 80%削減する」等の目標を設定
③生産技術の開発・改善を進め、環境負荷低減とコストダウンを同時に実現する「グリーンファクトリー活動」
④取引先と一体となって環境負荷低減に取り組む「グリーンサプライヤー活動」
この4つの取り組みが評価され、2019年12月に日本経済新聞社より「日経SDGs経営大賞」で大賞を受賞しています。すごいのは事業活動だけでなく、社内での環境への取り組みも推進している事です。それを「エコオフィスの5アクション」と呼んでいます。
①オフィス内で省エネ・節電を推進する
②エレベーターの効率運用に努める
③水の節約に努める
④ゴミの排出量削減及び再資源化に努める
⑤購入時は環境に配慮されたものを選択する
エコオフィスの5アクションは、明日からでもすぐに取り組めそうな内容です。一つ一つのアクションは小さいものですが、会社全体が取り組むことによって大きな成果につながることでしょう。
CO2削減ポテンシャル診断推進事業
環境省は製造業者を対象にCO2削減ポテンシャル診断推進事業を進め、そのうち、2つの診断の支援とそれに基づく設備更新などを支援しました。
①CO2削減ポテンシャル診断
②CO2削減対策機器への更新支援事業工場・事業場等のCO2削減診断
CO2削減ポテンシャル診断
補助内容は、対象者に対して110万円を上限に定額を支援されます。条件として、工場・事業場(年間CO2排出量3,000トン未満)を対象に、環境省選定診断機関によるCO2削減診断の実施及び診断結果に基づいた削減対策実施案の策定があります。
CO2削減対策機器への更新支援事業工場・事業場等のCO2削減診断
補助内容は、対象者に対して設備投資費用の1/3を支援(中小企業は1/2)します。条件として、平成29・30・31年度の①の診断結果における策定案に基づき20%以上(中小企業は10%以上)のCO2削減量必達を条件に設備更新に対して支援の実施があります。
支援内容
支援内容は以下の工程で行われます。
①環境省選定により診断機関が診断を実施
②診断結果に基づいた削減案を策定、策定案に基づき20%以上(中小企業は10%以上)のCO2削減量を必達することを条件とし、削減の潜在性を可視化する
③事業者がCO2削減計画に基づき、設備導入や運用改善を実施
④設備更新費用に対して支援が実施される
⑤事業者が削減量を算出・報告。国が報告内容を分析し、全国へ情報発信する
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業
2021年度、環境省より製造業者を対象としたCO2削減ポテンシャル診断推進制度の経験を踏まえた「新しい省エネ補助金制度」が始まります。
①脱炭素化促進計画の策定支援
②設備更新に対する補助
脱炭素化促進計画の策定支援
補助内容は、対象者に対して100万円を上限に中小企業1/2以内の補助率で支援されます。条件として、CO2排出量50トン以上3,000トン未満の工場・事業場を保有する中小企業等となります。補助対象経費はCO2削減診断及び削減計画策定となります。
従来行われていた「CO2削減ポテンシャル診断」の診断結果報告会の後、事業者が実施したいと判断した対策に対して、事業者と協議の上、実施時期等を決定し、今後の5年度間程度を見据えた「削減計画」を策定します。「削減計画」に含まれる内容は以下の通りです。
・今後5年度間程度における各対策の開始時期
・事業者が対策を実施可能なための事業者の実情に合った具体的な実施方法
・削減計画全体の実施体制、及び対策ごとの実施責任者、実施担当者
・対策が設備導入の場合、設備仕様と見積書
設備更新に対する補助
設備補助は2通りあります。補助対象経費はどちらも設計費、設備費、工事費です。
1つ目の補助内容は、対象者に対して1億円を上限に大企業も対象とした1/3以内の補助率で支援されます。条件は「脱炭素化促進計画」に基づく工場・事業場です。
2つ目の補助内容は、対象者に対して5億円を上限に大企業も対象とした1/3以内の補助率で支援されます。条件は「脱炭素化促進計画」に基づく工場・事業場で、かつ以下の条件を満たす事です。
①ガス化または電化等の燃料転換
②CO2排出量を4,000t-CO2/年以上削減
③システム系統でCO2排出量を30%削減
新しい制度では「削減計画」がそのまま設備導入補助金の申請書式として使用され、設備導入補助金の審査が行われる予定です。事業者が中小企業等で設備導入補助金に応募したい場合、削減計画を策定する方法は2つです。
①CO2削減ポテンシャル診断の時と同様に、補助制度を利用して、脱炭素化促進計画の策定支援の診断機関に診断と削減計画の策定を依頼する。事業者には、診断機関に支払った金額の約1/2が補助される
②計画策定支援の制度を利用せずに、削減計画を事業者自ら策定、もしくは脱炭素化促進計画の策定支援を利用せずに、第三者に削減計画を策定してもらう
まとめ
製造業とCO2削減について解説してきました。以下、まとめになります。
・日本の製造業のCO2排出量は全体の28%を占めている
・小さなアクションでいいから、CO2排出量削減を意識して取り組む
・製造業における無駄なエネルギー削減はCO2排出量削減に繋がる
CO2削減は地球全体での重要な問題です。企業として取り組めば企業価値向上にもつながります。使われているエネルギーを削減するといった大きなアクションから、オフィスでできる小さなアクションまで、明日からCO2削減のためにできる事はたくさんあります。
CO2排出量が増えれば、私達が住む地球が苦しむことになります。そうなると、私達は生きていくことが難しくなります。生活を豊かにしつつ、どう行動すればCO2削減に繋がるかを考えて行動する必要があるでしょう。ぜひCO2削減のために明日から小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。