板金加工を個人依頼する前に知っておくべき注意点とは?
加工された金属類は、作りが簡単なものだとホームセンターなどで安価に販売されています。しかし、既製品でほしい形が見つからない、車両ボディに利用するような複雑な形をしている場合、専門の板金加工業者に依頼する必要があります。板金加工を個人依頼する場合、費用相場や注意点は何なのでしょうか。今回は板金加工の個人依頼する前に知っておくべき注意点について解説解説します。
個人依頼を受け付けている板金加工業者もいる
板金加工業者に依頼をする、と聞くと大量発注できる企業である法人しか依頼ができないというイメージがあるかもしれません。
しかし、少数から個人依頼を受け付けている板金加工業者もいます。インターネットで検索すると、個人依頼を受け付けている板金加工業者のサイトを見つけることができるので調べてみましょう。
個人依頼の事例
個人依頼の事例は以下の通りです。
- アルミ製コントローラーの天板
- テーブルのステンレス製天板
- 家の階段の笠木のステンレス製カバー
- バイク用サーフボードキャリアのステンレス製補助金具
- キッチンシンクに置くステンレス製の板
- 浴室排水溝のステンレス製の蓋
- ガスコンロのステンレス製隙間塞ぎカバー
- ステンレス製自作PC用部品
- ペットの食事と水飲み場のアルミ製養生など
日常生活に必要だけど、既製品にないので困っている方が、オーダーメイドで依頼をしているようです。
板金加工を個人依頼した際、見積もり金額が異なる理由
個人依頼の場合、出来上がる製品だけを見て、安く予算を立てる人がいますが、板金加工には加工以外にも以下のような費用が一緒に含まれています。また、単価は会社によっても異なる場合があります。
- 段取り代(準備代)
- 精密機械を扱う作業員の人件費
- 設備のメンテナンス代などの諸費用
個人依頼を引き受けている株式会社仁張工作所の場合、設計費・鋼材費・加工費・部品費・塗装費等の合計に経費・利益を加えたものを単価としています。板金加工を個人依頼した際、見積もり金額が異なる理由は以下の通りです。
金属の種類によって異なる
1つ目は「金属の種類によって異なる」からです。
金属の種類によって費用は異なります。
たとえば、アルミは重量が軽く、強度もそれほどないので加工しやすいですが、ステンレスはアルミに比べて重量が約3倍あり、強度もあるのでアルミよりも加工しづらいです。
そのため、見積もりを依頼する前に、どの材料で作ると安くなるのか、そして用途によって素材は何が適切なのか、直接板金加工業者に相談するのをオススメします。
単品モノやオーダーメイドは高くなる
2つ目は「単品モノやオーダーメイドは高くなる」からです。
個人依頼の場合、オーダーメイドを含む単品モノの発注が多くなるでしょう。しかし、個人依頼でも法人依頼でも、単品モノは価格が高くなります。
単品モノの場合、オーダーメイドで曲げ加工時に他の品物用の金型が転用できない場合、特別に金型を作る必要があり、その分費用がかかります。
どのような形状に加工するかによって異なる
3つ目は「どのような形状に加工するかによって異なる」からです。
板金加工は加工金属やどのような形状に加工するかによって、費用が変わってきます。ハンガーやゼムクリップのように、細い金属は折り曲げて動物やパズルピースなど、色々な形にするのには専用機で器用に作る事ができます。
しかし、太い金属棒の場合、専用の金型を使ってかなり強い力を加えないと曲がりません。
曲げ加工はロット数が多くなり、パイプや丸棒など、素材の太さによってノウハウも異なります。そのため、1つだけ製作するために加工セッティングするとなると、効率が非常に悪く、コストがかかります。
加工方法の内容によって異なる
4つ目は「加工方法の内容によって異なる」からです。
板金加工には曲げ加工や溶接など、様々な金属を加工する方法があります。それぞれ加工する手間や制約があり、その分値段が高くなっていきます。
たとえば、手のひらサイズのものを曲げ加工をするだけなら、内容にもよりますが1,000~3,000円くらいかかります。
また、溶接の場合支給した素材でしてほしいと要望しても、支給素材の種類が何か不明なことがあり、素材によっては溶接が難しいものもあります。その場合、依頼そのものを断られるか、受けたとしても失敗するリスクを伝えた上で万が一失敗しても代金は請求されます。
板金加工の相場基準
4つ目は「板金加工の相場基準はあってないようなものだ」からです。
個人依頼をする人の場合、板金加工の知識がないまま依頼する人が多く、板金加工の相場が何を基準にしているのかわからないのではないでしょうか。
- レーザー切断する素材の厚みや大きさ
- 素材を切り抜いて捨てる部分が多く出ないか
- 曲げ加工で使える転用できる金型(無ければとても高いが作る)
- 素材の種類
- 溶接の必要性など
たとえば金型の場合、転用できる金型があれば少しでも安くできますが、イチから作るとなると非常に高くなります。このように、様々な要素が組み合わさることで金額が異なるため、相場はあってないようなものだといえるでしょう。
個人依頼で板金加工業者が困ること
個人依頼で板金加工業者が困ることは以下の通りです。
正式な図面データを出してくれない
1つ目は「正式な図面データを出してくれない」ことです。
依頼慣れしている法人と異なり、個人依頼の場合、図面なしで文面だけで完成図のイメージを伝えてくる方が多いようです。しかし、言葉によるイメージとは想像する人によって異なります。
また、簡単なイラストで送られても、ここの部分は構造がどうなっているのかわからないものが多く、詳細がわかりにくいようです。正式な図面ではないため、依頼を受けてから見積もりを出すまで詳細を知るべく色々と質問をしなければいけないので時間がかかってしまいます。話を聞いて新たな図面を作る必要があり、業者側は非常に苦労するため、図面問題は個人依頼で困る理由として上位にあるといえるでしょう。
想定見積もりが異常に低すぎる
2つ目は「想定見積もりが異常に低すぎる」ことです。
価格に対する感覚が法人と個人とでは違いすぎるようです。たとえば、見積もりをしてみると最低でも10,000円を超えるのに、予算を3,000円くらいと依頼してきたり、ホームセンターなどで大量生産されている市販品を元に予算を以上に低く想定している方が多いようです。
さらに、価格を厳しく設定する割に、もっとピカピカにしてほしい、公差精度を細かく指定したりなど、品質にも非常に注文が多いようです。
追加加工には芯出し作業が重要となる
3つ目は「追加加工には芯出し作業が重要となる」ことです。
個人依頼をされて、「追加加工お願いします」と言われた場合、板金加工業者の頭を悩ませるのは、機械加工をする上で非常に重要な芯出し作業です。芯出し作業とは、加工部分の基準となる座標を機械に覚えさせることです。
たとえば、ここに空いている穴の大きさをもう少し大きくしてほしいと言われた場合、穴の中心位置に刃物を落とさなければいけません。適当に目分量で行うと穴が変な形に開いてしまうため、穴の中心を測定することが芯出し作業です。
複雑な形だったり、古くてデコボコしていたりする場合、加工点の測定が困難となり、正確な芯だし作業ができません。芯出し作業が面倒くさい場合はそれだけ時間もかかりますので、加工賃に段取り代(手間代)が必要となります。
加工物の固定方法を探し、作り出す
4つ目は「加工物の固定方法を探し、作り出す」ことです。
加工物は、種類によって固定ができるか、割れやすくなるか、などそれぞれ異なります。
硬い金属の塊だと、バウスという油圧で掴む道具を使って加工物を固定することができます。しかし、アルミやタイルのホイールなどは油圧で掴むと割れてしまう可能性が高くなります。
固定方法が見つからない場合、専用の治具を考えて作り出し、何とか固定できるようにするため、その分費用と時間が高くなります。治具が作れない場合は、加工不可となります。
平行出しで難儀する
5つ目は「平行出しで難儀する」ことです。
個人依頼の場合、球体や歪な形を望まれることがあり、平行出しで困ってしまいます。平行出しとは、加工物の加工したい面を決まった位置に据え置くことです。
たとえば、真っすぐに穴をあけたいと思っても、加工物を斜め固定していたら加工できません。また、真っすぐ固定できていると思っていても、実は1度傾いて固定している可能性があり、これが致命的な加工ミスに繋がる場合があります。そのため、平行出しをしっかりしてから加工する必要があります。
まとめ
板金加工と個人依頼を解説してきました。以下まとめになります。
- 板金加工業者へ個人依頼する場合、インターネットで調べて問合せをする
- 既存の金型が流用できない単品モノの場合、その分時間や手間、費用がかかるため高くなることを知ったうえで依頼する
- 個人依頼する場合、ホームセンターに売ってるモノ感覚で異常に安い予算を立てず、文章ではなくできるだけ正確な図面などを用意する
個人依頼する場合、一点もので、かつ既存の金型が流用できないものはその分人件費や加工費用などが高くなります。複雑な形状を望む場合も同じです。ホームセンターで安く売っているのは大量生産が可能な状態だからです。なので、オーダーメイドの単品モノは大量生産に比べ、時間も手間も労力もかかって作り出されるため、ホームセンター並みの値段で作れないことを知っておいてください。
また、文章だけの説明ではなく、できるだけイメージが伝わりやすい図面か、簡単なイラストを用意すれば、打ち合わせがスムーズにいくでしょう。ステンレス製の天板や排水溝の蓋など、自分が注文したものが日常商品として届くのは非常に喜びへとつながるでしょう。この機会に板金加工を個人依頼してみてはいかがでしょうか。