本来、セットメーカーの定義は製造業におけるピラミッドの頂点に位置して、下請けの系列企業から部品を調達して組み立てた自社ブランドの製品を出荷するメーカーの事でした。

セットメーカーは最終製品を自社のブランドで出荷しているわけですから、製品に対する最終責任を負うことになりますが、製造業のピラミッドではより上流に位置するメーカーほど多くの利益を確保するのですから、それ相応の社会的な責任も大きいのです。

その責任の一つに日本独特の系列制度がありまして、系列内での技術交流も行いますし、下請けメーカーの最低限の利益も確保するように考えていたと思います。

そのあたりは系列の良さであって下請けを買い叩けば確かに一時的に利益を確保できますが、長期的な目で見れば下請けが疲弊して人件費まで削減するようになって良いものがやがて作れなくなる事を理解していたのだと思います。

まぁ出向や役員の派遣などの人事交流もありましたから、そういった関係も保てたと思いますし、下請けに対して無理も言うけどちゃんと面倒も見るというのが日本的なセットメーカーを頂点としたピラミッド構造だったわけです。

個人的な意見ですが国内の自動車メーカーではトヨタ系列が圧倒的に高いシェアを持っていますよね?

今から40年ほど前でしたら確か日産とトヨタは国内シェアをほぼ互角で争っていたわけですが、今やトヨタのシェアがダントツになってしまっています。

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とある自動車会社は青い目の外国人が社長に就任して素早く系列を破壊してしまって、コストカッターの異名通りに短期間にコストダウンに成功して、ずいぶんと高い評価をした似非エコノミストも随分と多かったのですが、長期的に見れば他に要因はあるにしてもトヨタの背中が見えないほど離されてしまっていますね。

確かに今は好調でも数年後はどんな企業でも先行きは不安な時代ですから、今のうちに少しでも利益を確保しておこうという気持ちは十分理解出来る話ですが、だからといって目先の利益のみでセットメーカーとしての社会的責任を意識しなくなってしまうと、どうなるのでしょうか?

ピラミッドの上に位置する企業の下が崩れてしまったら・・

わかりますよね?

上ばかり見ていると足元をすくわれると言われますが、自分の足元である納入業者(下請け業者)がしっかりしていないと、会社経営は不安定になりますしどんなに頑張っても上には行けないという事になってしまいます。

そんなわけでセットメーカーが自ら系列を排除した事が日本製造業の弱体化が始まった一因のような気がするのです。

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