2021年の景気動向は製造業主導で回復の兆し!アフターコロナ後に期待大
製造業は日本のGDP(一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値)の20%を占めており、国全体の経済収支に大きく貢献しています。
日本の経済は雇用・所得環境の改善や設備投資の拡大により緩やかな回復を続けていました。しかし、2018年後半以降、中国経済の減速や度重なる災害、通商問題や海外経済の不確実性の影響を受け、製造業を中心に企業収益や投資にも波紋が広がりました。
コロナの大打撃を受けた2020年
2020年、新型コロナによる世界的な感染拡大が起こり、内外経済が大幅に下押しされ、景気は厳しい状況になり、国内製造業が大きな判断を迫られる事となりました。
ドイツは輸出主導型経済を行っています。コロナウイルス抑制に比較的成功していますが、米国など主要な輸出国が経済的ダメージの影響を受けると、同じように苦しい状況になってしまいます。
全ての産業部門において、世界的に新型コロナウイルスによる景気後退が見られました。ロックダウンと売上不振は特に自動車、航空宇宙、繊維産業に大打撃を与えました。
中国湖北省武漢は国内自動車メーカーや同部品メーカー等が進出していて、日本も現地生産されているバネや繊維・樹脂製品の部品、素材などを輸入していました。2020年1月、中国全域が不要不急の渡航を制限する、感染症危険レベル2まで引き上げられた事により、部品調達を断たれてしまい、中国に進出している日系企業や中国と取引がある国内企業などに大きな影響を与えたのです。
2020年の景気動向指数
2020年12月の景気動向指数は前月比0.4ポイント減の35.0となり、7ヶ月ぶりに悪化しました。新型コロナウイルスの感染拡大などで持ち直し傾向が止まり、国内景気は一次的に後退するが、その後、緩やかな上向き傾向で推移すると予測されていました。
10業界中、『サービス』、『運輸・倉庫』、『小売』など8業界がマイナス、『製造』など2業界がプラスとなり、更にGo to travelキャンペーン中止により、人の移動が抑制され、『サービス』や『小売』を中心に景気が悪化しました。
2020年12月8日に発表された7-9月期の実質GDP成長率2次速報は、前期(4~6月期)比5.3%増、年率換算で22.9%増となり、4四半期ぶりのプラス成長となりました。新型コロナウイルスの影響を大きく受けていますが、2020年の国内経済は緩やかながら企業の生産・出荷や個人消費が上向き、TDB景気動向調査の景気動向指数も6ヶ月連続でプラスになるなど、徐々に持ち直しの動きがみられました。
2021年の国内景気動向は新型コロナ次第
2020年は新型コロナ感染状況に左右される1年でした。2021年は新型コロナの収束を最優先にし、企業活動や消費活動の活性化に向けた政策を国が推進する事によって、経済動向も徐々によくなっていくのではないでしょうか。減速しつつある経済を再上昇させるには、新型コロナの収束、人手不足の解消、海外経済のリスク対応、災害対策とやることが山積みだと言えるかもしれません。
2021年の景気は「回復」すると見込む企業は、『製造』(17.3%)や『運輸・倉庫』(16.6%)が多くみられました。ワクチンの開発に期待する声が多く、前回調査から7.0ポイント増の13.8%でした。一方「悪化」すると見込む企業は、『建設』(44.8%)と『不動産』(40.4%)の高水準が目立ち、前回調査より4.8ポイント減少し32.4%でした。つまり、日本の企業は3割が2021年の景気は悪化していくだろうと予測している事になります。国内景気は2020年に引き続き、新型コロナの状況次第とみている企業が多いようです。
2021年の景気動向予測
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響は世界経済に大きな影響を与えています。世界の製造業が、コロナウイルス感染が発生する前の水準に戻るまでにはどれぐらいの時間が掛かるのでしょうか。米調査会社Interact Analysisによると、多くの国において市場の回復には3年以上掛かり、ほとんどの国では2024年までは2019年の生産レベルには戻らないといいます。
このまま新型コロナウイルスに影響され続け、2021年度の経済は悪くなる一方なのでしょうか。日本国内の中国地方と九州地方、そして台湾電力設備製造業の2021年度の景気動向の見通しを紹介します。
中国地方の2021年度経済見通し
コロナ終息後に成長を見込める電気自動車(EV)やデジタル関連投資が着実に実施されれば、国内の中国地方において製造業を中心に持ち直し、企業の設備投資の伸び率は1.7%になり、2021年度の景気動向は緩やかな回復を続けると、地元の地方銀行は見通している様子です。自動車関連などの製造業輸出が回復すると予測し、2021年度の中国地方の実質的経済成長率をは3.4%であり、全国予想の3.1%も上回ります。
九州地方経済の2021年度経済見通し
新型コロナウイルスの影響により、九州の2020年度の成長率は最大下落幅となりました。自動車などの輸出が想定より回復しましたが、コロナウイルスの長期化で消費マインドが伸び悩み、民間消費、民間住宅投資を前回予測より下げ、九州は全国よりコロナによる内需収縮は小幅ですが、外需悪化影響を強く受け、全国より大きなマイナス成長となってしまったのです。
2021年は輸出や民間消費を中心に持ち直す動きがみられています。コロナ前の水準には届きませんが、2020年度の落ち込み幅が全国よりも小幅な分反動が小さく、沖縄を含む九州の実質域内総生産(GRP)は48.1兆円、成長率は前年度比+3.7%になると予測されています。
半導体関連、自動車を中心に輸出が伸び、製造業を中心とした設備投資、公共投資が順調に推移すれば、製造業主導による回復で全国を上回るプラス成長になるかもしれません。
企業業績や所得環境の改善傾向から、消費マインドは回復に向かいますが、コロナウイルスへの感染対策継続により、サービス消費が伸び悩んでいます。そのため、2021年度の民間消費は、2020年度の落ち込み分の半分程度の持ち直しになると予測されています。コロナ以前の水準まで回復するには、2023年度以降になると予想されており、2021年は踏ん張りどころだと言えるでしょう。ワクチンが一般の人も摂取できるほど集団免疫が拡大していけば、サービス関連を中心に消費回復は上がっていくかもしれません。
製造業の投資額は、2020年度は前年度に比べ減りましたが、2021年度は世界経済の回復による5G需要など半導体関連の投資が増える事を見込み、次世代自動車、ヘルスケア、環境などの成長分野への民間企業設備投資に期待しています。
また、九州からの輸出は自動車、半導体関連が強くリードしており、月別では既に前年並みに回復しました。2021年度は5G関連の需要、車載向け、データセンター向けの市場が拡大し、自動車も繰り越し需要、モデルチェンジなどが下支えし、輸出額過去最大の2018年度に匹敵するのではないかと予測されています。国内外でのコロナウイルスによる動向や、バイデン新政権後も対中強硬姿勢継続による米中摩擦が懸念の材料となっているようです。
台湾電力設備製造業の2021年度景気展望
台湾経済研究院(TIER)が行った電力設備製造業の景気動向調査によると、台湾の調査対象企業の内、約半分以上が台湾の生産量、海外販売量、受注量、総販売量、台湾メーカーの販売額などいずれも成長し、2021年の景気は好転すると考えていることがわかりました。台湾では第5世代移動通信(5G)対応製品、電力施設の建設、向上や住宅工事などの需要が増加していて、関連設備と部品の販売が好調に繋がるのではないかと見通しているようです。
また、各社が生産能力の再調整を進めているという理由から、62.07%の企業が、総コストが増加すると考えているようです。一部メーカーは増加したコストを製品価格に反映させる計画ですが、中国メーカーが積極的に受注獲得に動いているため、原材料価格も上昇し、多くのメーカーが価格引き上げには慎重な姿勢を取っています。このように、価格競争の激化と国際供給連鎖の変化は企業の運営コストに大きく影響し、2021年の台湾電力設備製造業の景気上昇は小幅に留まるだろうと予測されています。
経済部に所属する台湾中油(CPC)、台湾電力(TPC)、台湾糖業(台糖)、台湾自来水(台水)の資本支出額は前年比4.85%増加しました。2021年に大潭火力発電所(桃園市観音区)、台中火力発電所(台中市)、興達火力発電所(高雄市)でガス発電設備の新設がピークになるため、TPCの資本支出額は一番高く、1,663億6,600万台湾元でした。
また、民間業者が手掛ける海能「フォルモサ2」(苗栗県沖)、允能(雲林県沖)、大彰化(彰化県沖)、彰芳(彰化県沖)などで、一部の風力発電機稼働を開始し、関連する機電設備と建設工事の増加が、電力設備製造業の売上高成長に好材料となると考えられています。2021年の台湾電力設備市場は政府と民間どちらからの需要増加によって販売額が成長すると予測できます。
台湾は電気自動車(EV)販売台数が政府の補助政策を受けて成長を続けています。それに伴い、バッテリー充電、好感設備の需要が増加し、企業がインフラ設備投資を拡大していっています。TPCは再生エネルギーの給電が不安な点を補うため、エネルギー貯蔵設備の建設を進めています。台湾のエネルギー貯蔵需要量は2025年までに590メガワット(MW)に達すると予測されていて、その内160MWTPCが台湾本島に設備を設置、430MWは民間企業に開放しています。TPCはエネルギー貯蔵設備と生産に対する民間企業の投資意欲向上を図るため、2021年にサービスプラットフォームを立ち上げる計画を立てています。
経済部によると、台湾政府の3大投資計画の投資額は1兆1,868億台湾元に達し、海外で事業展開する台湾系企業のUターン投資と半導体産業の投資の増加による電力消費は2021年にピークを迎えるとTPCは予測しています。また、高級オフィス物件の賃貸市場は需要に供給が追い付かず、台湾北、中、南部でオフィスビル建設が進んでいる状況です。2020年上半期の台湾全土の住宅工事着工件数は前年比12.8%増加の6万件を突破しており、電力設備製造業への需要は増加し、2021年も好調が続くと予測されています。
Uターン投資の増加と半導体メーカーが工場建設と初期段階の生産を開始していることから、電力消費が増加し、政府と民間発電業者が資本支出を拡大させた事により、関連する重電製品の需要も成長するかもしれません。一部製品が台湾で生産されるようになったことも好材料となると考えてよいでしょう。総合して、2021年の台湾電力設備製造業の生産額と販売額、景気は2021年より小幅成長する見通しがあると言えるでしょう。
まとめ
2021年の製造業の景気動向について解説してきました。以下まとめになります。
・世界的なコロナウイルスの影響を受け、内外問わず2020年の経済は下落したが、2021年には上昇すると予測されている
・九州地方や中国地方など、2021年は製造業主導でプラス景気になるかもしれない
・2021年の景気動向はコロナ前の水準には戻らないが、コロナが収束すれば徐々に戻っていくと推測されている
日本のGDPの20%を占め、国全体の経済収支に大きく貢献している製造業が好調になっていけば、2021年の景気動向は上昇気味になっていくのではないでしょうか。米国新政権による対外政策による輸出入の先行きも注目ですね。