ドイツの板金加工メーカーTRUMPF! 高い技術とリーズナブルな価格でタイの産業開発を支え続けている
世界的に板金加工メーカーとして有名なのがドイツのTRUMPFです。自動車業界の電動化や半導体需要の高騰、複雑化なども含め、金属加工にも大きな変化が生まれる中でTRUMPFはどのような展開を進めていくのでしょうか。今回は、世界中で活躍する板金加工メーカーTRUMPFについて解説します。
ドイツの板金加工メーカー「TRUMPF」
TRUMPFは1923年にクリスティアン・トルンプ氏がシュトゥットガルトの機械工場を買収して誕生した、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州に本社を有する工作機械・レーザー加工機のメーカーです。
機械向けハイテク技術を用いたソリューションを得意とし、板金加工、レーザー、エレクトロニクス分野での強みを活かして世界中に製造ソリューションを提供しています。
現在は世界約70ヵ所に現地法人を設け、従業員は約12,000人、売上は30億ユーロにおよび、日本にも複数の拠点があります。日本の顧客と共同開発した製品も多く存在し、日本の売り上げ規模はTRUMPF内でトップ5に入っています。
世界で唯一あらゆるレーザー発振器を自社で開発・製造していることが一番の強みといえるでしょう。その技術を板金機械に生かすことで、同業他社との差異化を図り、総売上の10~15%を開発費に充てることで新技術・新製品を生み続けていることが、日本や世界のお客様から高く評価されている所以です。
また、パートナーとして機械設備、ソフトウェア、システム関連のコンサルティング、プラットフォーム及びソフトウェアをお客様に提供することで、製造業のデジタルネットワーク化を推進しています。
製造業においてどんなに特殊で複雑な課題であっても、生産効率向上・ビジネス成功に貢献するソリューションを提供するため、以下のように革新的な製品を取り扱っています。
板金加工機
1つ目が「板金加工機」です。
臨機応変な板金/パイプ加工向けの工作機械とレーザー装置がTRUMPFの中核事業です。
TRUMPFは板金加工機において以下のものを提供しています。
・ベンディング(鉄板などに圧力をかけて金型で挟んで曲げる)
・パンチング(金型を使って金属パネルに孔をあける)
・パンチレーザー複合プロセス
・2D/3D切断アプリケーション
・レーザー溶接向けの設備とシステム
・積層造形向けのソリューション
レーザー
2つ目が「レーザー」です。
レーザー加工は半導体、電子産業など微細な加工から、自動車、造船など大型の加工まで幅広い市場で利用されています。
TRUMPFレーザーは切断、溶接、マーキング並びに表面加工分野での産業用アプリケーションに適した汎用ツールであり、お客様に適したレーザー装置を提供しています。マクロ/ミクロ/ナノ領域のいずれであっても、以下のものを提供しています。
・カスタマイズしたシステムソリューション
・ソフトウェアツール
・アプリケーション知識
・コンサルティング
VCSELソリューションとフォトダイオード
3つ目が「VCSELダイオードとPhotonic Componentsレーザーダイオード」です。
TRUMPFのVCSEL (垂直共振器面発光レーザー) ダイオードは、光がチップの1つ又は2つの側面から出射されるEEL(端面発光レーザー)ダイオードと異なり、光が垂直に半導体チップ面に放射されます。
TRUMPFのPhotonic Componentsレーザーダイオードは、低消費電力でありながら、データ転送で最高レベルの性能を実現するため、消費者市場でも産業界でも様々な用途で使用可能です。使用領域は以下の通りです。
・自動運転車
・スマートフォン
・デジタルデータ転送など
パワーエレクトロニクス
4つ目が「パワーエレクトロニクス」です。
TRUMPFは、誘導加熱とプラズマ/レーザー励起分野での製造ソリューションとして、高出力の直流/中周波/高周波ジェネレータを幅広く取り揃えています。そのため、お客様にとって必要な形で電力を供給することが可能です。
また、製品ポートフォリオを拡大し、革新的な双方向インバータを開発・提供することにより、必要とされる周波数と出力がいかなるものであっても、再生可能エネルギーから得られた電気を蓄電システムに供給することができます。
電気ツール
5つ目が「電気ツール」です。
TRUMPFの機械は全てスイス製であり、板金加工作業者は当社の高品質ツールを建設現場及び工場で、板金の切断、結合及びエッジ成形用に使用しています。高品質なだけでなく、最新技術が採用されているため、TRUMPFの電気・バッテリーツールは世界中の板金加工専門家から使いやすいと信頼されています。
スマートファクトリー
6つ目が「スマートファクトリー」です。
多品種少量化が進むにつれて間接工程にかかる手間が激増すると、全体像と費用を把握し続けることは今以上に困難になっていきます。TRUMPFはここに生産デジタル化のチャンスを見出しました。
TRUMPFはモジュール式のネットワーク化ソリューションを提供することで、以下のものに貢献します。
・生産における連続的な流れの実現
・インダストリー4.0の一環としての全工程の透明性、柔軟性及び経済性の向上
ソフトウェア
7つ目が「ソフトウェア」です。
TRUMPFのTruTopsソフトウェアポートフォリオは幅広く、機械コントローラと直接リンクにより、オンライン上でジョブステータスを把握し、問い合わせや受注・購買の管理を含む業務プロセス、製造プロセス、完成品の出荷まで全体を簡単かつ的確に制御し、カバーします。
サービス
8つ目が「サービス」です。
具体的な進捗をもたらすTRUMPFのサービスは、最高水準での生産を維持できるよう、パートナーとしてカスタマイズしたソリューションとサービスパッケージによるサポートを以下のような時に任せられます。
・収益性の高い生産に向けた最善の必要条件を整える場合
・TRUMPF製品を変化に対して柔軟に適応させる場合
・最大限の価値創造に向けた新しい可能性を示す場合
Pay-per-Part
2020年10月14日、TRUMPFはミュンヘン再保険および同社のIoTサービス子会社リーレイヤ(Relayr)と提携し、新ビジネスモデル「Pay-per-Part」を発表しました。それぞれの役割は以下の通りです。
・TRUMPF:顧客工場にTRUMPF製レーザー切断機を設置し、生産ノウハウ・必要なサービス・メンテナンス・使用原材料の提供など行う
・顧客:顧客は大きな投資資金を用意することなく、機械で板金を切断した分に応じて事前合意した費用を支払い、最新の全自動レーザー加工機などを利用できる
・ミュンヘン再保険:設置される機械の資金を提供し、生産が行われなかった場合のリスクは、ミュンヘン再保険が付す保険でカバーする
・IoTサービス子会社:必要なデータ分析を行う
機械を使用した分しか支払う必要がないため、需要に応じた生産調整が可能なこのサービスによって、既存顧客の支援だけでなく、新規顧客獲得にも繋がる第一歩となるでしょう。
TRUMPFとタイ市場
TRUMPFはタイで20年間機械などの販売ビジネスを行い、代理店を通じて充実したアフターサービスを行ってきました。タイでのメイン事業は以下の通りです。
・工作機械(板金加工工程における高度な技術を備えている、レーザー加工機、パンチングマシン、ベンディングマシン、レーザーパイプ切断機など)
・レーザー(レーザー使用が進んでいる産業界での主流は熔接機、3次元レーザー加工機、マーキングレーザーなど。新型機である3次元の部品加工が可能となる3Dプリンターも)
タイの市場は可能性が巨大
タイ市場の可能性は巨大であり、将来産業発展がさらに進行することで、自動化、オートメーション、板金加工を含めた自動車産業など、TRUMPFがターゲットとしている各部門に浸透すると予想されています。
タイ市場での競争は劇化していく一方で、製品はハイテクを駆使した複雑なものですので、顧客に対する質の高いコンサルティング、アドバイスが重要となってきます。将来を見据えた顧客の生産計画に沿った的確な技術コンサルティングを心がけ、製品の生産効率を最大限に活かすことができたら、事業の可能性は高まっていくでしょう。
中古機械修理センターと3Dプリンター
世界展開を行っているTRUMPFの中でタイ法人の特徴は、中古機械修理センターを持っていることです。このセンターはTRUMPFの中古機械を完全に部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻し、中古市場に送り込む機能を果たしているため、メーカーならではの契約料を備えた中古機械を生み出しています。
タイではチタン製の人工骨などの市場が拡大しているので、医療産業を主に3Dプリンターが発展していくと予想され、すでに輸入が始まっています。
3Dプリンターは日本でも歓迎が予想されますので、日本企業が多く進出しているタイにおいて日系企業に提案を開始しています。
TRUMPFはタイの産業開発を支える
タイの産業全体が成長し続けることで多くの部門が発展していきます。
たとえば、すでに大きく成長し、広大な市場ができている自動車です。これから需要が広がる電気自動車(EV)の製造には板金の切断、組込、加工技術が必須であり、効率的なレーザー使用という点においてTRUMPFの製品を有効に活かし、生産力向上を目指すことができます。また航空機産業も高度な精密レベルが要求されるため、TRUMPFのレーザー技術はさらに多く求められます。
タイの顧客は高い技術とリーズナブルな価格を求めるため、TRUMPFの板金加工機の流れは増々強まり、タイの産業集積のさらなる充実をサポートするため、将来の産業開発を支えることになるでしょう。
まとめ
世界中で活躍する板金加工メーカーTRUMPFについて解説してきました。以下、まとめになります。
・ドイツ板金加工メーカーTRUMPFは世界約70カ所に現地法人を設け、板金加工、レーザー、エレクトロニクス分野での強みを活かし、世界に製造ソリューションを提供している
・世界で唯一あらゆるレーザー発振器を自社で開発・製造し、総売上の10~15%を開発費に充てることで新製品を生み続けている評価の高い企業
・TRUMPFは成長し続けるタイの産業開発を支え続ける
世界中で活躍を続けるドイツのTRUMPFはタイ市場だけでなく、日本でも活躍しています。レーザー切断機を利用した分だけ料金を支払うというサービスなど、常に革新し続けるソリューション提供によって、既存顧客だけでなく、新規顧客の利用も増えていくでしょう。
また、脱炭素化を目指す世界の動きから板金加工必須である電気自動車の需要も増えていくと予想されますので、TRUMPFの活躍は増々広がっていくでしょう。