部品の加工や商品の購入の検討をはじめる際には、まずは見積りの依頼を行います。見積りを依頼された側が手動で金額を計算します。この「見積り」が無料という文化が根付いてしまったせいで、受注企業はかなり犠牲になっているようです。挨拶代わりに見積りをお願いされたり、違う会社から同じ図面が回ってきたり、発注者側は少しでもコストダウンするためにとりあえず相見積りを行って安くできる業者を掘り当てようとするため、製造側は非効率的な「見積り」に苦労します。この問題を解決するのが「自動見積り」です。今回は板金加工の自動見積りについて解説します。

従来の見積りが抱えていた問題点

従来、一般的に板金加工メーカーなどに部品の加工を依頼する場合、まず部品の図面を送り、打合せなどを経て見積りが業者から返ってくるのを待つものでした。
手作業での見積りは以下の理由で、発注側、製造側、両者にとって無駄が多い方法でした。

発注側:返ってくる見積り内容によって加工の条件や形状を変えて再び見積り依頼を出し、再度価格交渉を行うなど、時間的なロスが多い。
製造側:問い合わせを受け工数をかけて見積りを作成しても、受注に至らなければその工数がムダになる

その問題を解決するのが「自動見積りサービス」です。

自動見積りサービスとは

自動見積りサービスは、Webサイト上で即時見積を算出するシステムです。質問事項に沿って必要事項や数値をフォームに入力していくと、自動計算により価格が表示される仕組みになっています。

金属、ガラス、樹脂などの素材を販売している会社や板金加工メーカー、3Dプリンター出力サービス業者など、製造業にも広く浸透してきています。加工部品の自動見積りなど、試作やコンピュータを用いた工場の自動化などの分野で活用される事が増えつつあります。

板金加工の場合、板金部品のCADデータをWebサイトにアップロードすると、製作に要するコストと納期の見積りが出て、すぐに発注することができます。
手軽に見積りを得られるため、発注側にも製造側にもメリットがあるといえるでしょう。

自動見積りサービスの流れは以下の通りです。

①3D/2D図面をアップロード(3Dプリント造形の場合、3Dモデルをアップロード)
②工法/材質を選んですぐに見積取得
③合計金額を確認して見積書作成
④そのまま発注依頼

切削・旋削・板金加工では、3D/2D図面をアップロード後、最短時間で見積回答をしてくれるので、発注側の見積取得にかかる工数を大幅削減することができます。

自動見積りのメリット

自動見積りのメリットは以下の通りです。

製造側、発注側の両者にとって時間と手間を省略できる

1つ目は「製造側、発注側の両者にとって時間と手間を省略できる」ことです。

自動見積りは、必要な項目をプルダウンで選択し、数値を入力します。板金加工や3Dプリンターの出力のように自由度の大きい形状を扱う場合には、AIが自動で提示した加工の方法から目的に合う方法を選び、個数などの数値を入力し、3D/2D図面をアップロードします。

見積りは自動で算出され、即時見積りができます。そのため、条件を変えて何度も見積りを出しても、長い時間がかからず、最短時間で結果を出してくれます。

また、自動見積りを設定すると製造側は問い合わせのたびに見積書を作って提出する手間がなくなります。そのため、自動見積りサービスは、製造側、発注側の両者にとって時間と手間を省略できる、非常に有用なシステムといえるでしょう。

依頼を出した経験がない人でも簡単に見積り依頼をすることができる

2つ目は「依頼を出した経験がない人でも簡単に見積り依頼をすることができる」ことです。

自動見積りシステムは、選択や入力が必要な項目を自動で表示してくれるため、加工メーカーなどに依頼を出した経験がない人でも、簡単に見積り依頼をすることができます。
製造側、発注側のビジョンがあやふやでかみ合わない状態では、見積りの精度も悪くなり、何度も打ち合わせを重ねるなどの手間が必要になります。しかし、自動見積りを利用することで、実際に依頼するためのビジョンが固まっていくため、その手間を省くことができます。

3D/2D図面をアップロードするだけで即時見積可能

3つ目は「3D/2D図面をアップロードするだけで即時見積可能」なことです。

従来の自動見積りは、ある程度の規格や数値が決まっている業種がメインで使用していました。しかし3D CADやAIなどの普及により、3Dデータをサイトにアップロードすると、AIが自動で加工方法や手順などを選出し、見積りの計算ができるようになるなど、どんどん進化していっています。この進化に寄り、見積りのための2D図面を作成したり、見積りの前に加工方法を業者と打ち合わせたりする必要がなくなりました。

製造業の自動見積りは主に板金加工や金型などの機械部品、3Dプリンターの出力などに使われていますが、近い将来、切削などの機械加工にも適用されていくでしょう。

まとめ

今回は板金加工の自動見積りについて解説しました。以下、まとめになります。

・従来見積りは依頼側も受注側も手間やコストがかかっていたが、それを解決するのが「自動見積りサービス」
・自動見積りサービスは、3D/2D図面をアップロードだけで即時見積可能であり、最短時間で発注までもっていける
・見積りのための2D図面を作成したり、見積りの前に加工方法を業者と打ち合わせたりする必要がなくなった

3Dデータを作成し、金額を算出しても受注に至らないのは、板金加工だけでなく、どんな企業にとっても非常な痛手になります。自動見積りサービスを自社のサイトに設置するには有料ですが、従来の板金加工の見積もりから発注に至るまでの手間やコストを考えるとそれほど高く感じないでしょう。この機会に自動見積もりサービスを検討してみてはいかがでしょうか。