日本の製造業はこれまで品質と納期を重視してきたため、顧客満足度が高ければ多少の在庫や材料費、人件費のかさみや無理な出荷には目をつぶってきました。しかし、世界的な価格競争や消費者のモノ離れを前にそういった旧体制ではいられなくなりました。品質や納期を守りながら生産コストを下げ、経営やビジネス試算の最適化を実現する必要があります。生産現場の管理が完璧であっても、流通や販売時点で不備があり、それが納期や価格に悪影響を及ぼしていては商品の競争力は失われてしまいます。もはや生産管理は企業全体の動きも管理しなければ成立しづらい状況になりつつあります。そのために必要なのがERPシステムです。今回は製造業とERPについて解説します。

ERPとは

ERP(Enterprise Resources Planning)とは、直訳すると資源統合管理計画です。企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し、有効活用する考え方です。「基幹系情報システム」を指すことが多く、企業の情報戦略に欠かせない仕組みとなっています。ERPは、企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合し、効率化、情報の一元化を図るためのシステムとして誕生しました。

ERPは1970年代に製造業で普及したMRP(Material Resource Planning)を一般企業経営向けに展開したものです。MRPとは、資材所要計画のことであり、製造物に関する「必要なものを」「必要なときに」「必要なだけ」の計算だけではなく、生産にかかわる設備、人、金を含めた計画を行うことです。
つまりERPとは、経営情報をリアルタイムに可視化しながら、基幹システム同士の連携を通じて現場の業務プロセスを効率化し、組織全体の生産性を向上するために統合されたシステム環境を提供するための製品です。ERPは様々な業界・業種で経営管理の中枢を担うシステムとして広く導入されるようになりました。

企業活動の基幹をなす「会計」「人事」「生産」「物流」「販売」といった業務の管理は、従来部門ごとに導入されたシステムによって、個々のデータベースで処理されるのが通常でした。何故なら、部門によって求められる情報や処理の方法にいろいろ違いがあるからです。しかし、業務全体の流れを俯瞰してみるとこれら個別の業務は全てリンクし合っていて、最終的に会計業務に集約されていく事がわかります。そのため、各部門間でのデータの受け渡しに余計な手間がかかり、間違いが多発してしまいます。「会計」「人事」「生産」「物流」「販売」などバラバラに行われていた管理処理を統合し、それぞれのデータを効率よく運用していくためのシステムとしてERPは開発されました。

ERPの特徴

ERPの最大の特徴は情報の一元管理です。
ERPは、次の5つに分類されたシステムを統合し、ユーザーへ提供します。
・会計管理システム
・販売管理システム
・在庫購買管理システム
・生産管理システム
・人事給与管理システム

あらゆる所に点在している企業情報を一か所に集め、その情報を基に企業の状況を正確かつリアルタイムで把握し、経営戦略を決定していきます。さらにITなど他のシステムの連系によりスピード化を実現するといった目的での導入も増えてきています。

ERPと基幹システムとの違い

基幹システムとは、主要業務を支える様々なシステムのことです。一般的に「バックオフィス系」「業務系システム」と呼ばれており、業務ごとにそれぞれ独立しており、異なる部署とデータをやりとりする際は、システム間の連携が必要です。

ERPは企業に存在するデータを統合データベースで一元管理が可能なため、異なる業務間でのデータのやりとりの手間がなくなり、さらにはリアルタイムで企業の経営状況が確認する事ができます。そのため、経営層は最適な判断を迅速に下せるようになりました。

ERPパッケージ開発によって導入する企業が増えつつある

ERPは欧米で開発されたものであり、導入当初は日本の企業にフィットしにくいという問題点がありました。また、企業の業種は様々であり、それぞれの業種環境に応じたシステム開発が必要となり、日本国内でERPを導入する企業はあまり多くありませんでした。

しかし、業種に応じたERPパッケージなどが開発されるようになり、国産ERPが生まれる事によって、意思決定を迅速化できる環境が整えられていきました。基盤のシステムにオプションやアドオンを加えることで、現在では多様な業種に対して素早い導入が可能となりました。そのため、ERPを導入する企業が続々と増えつつあります。

様々なERPの導入形態

ERPには様々な導入形態があり、企業の目的に合わせた導入形態を選択する事ができます。
現在のERP導入形態は、次のように大きく4つに分けられます。
・統合型
・業務ソフト型
・コンポーネント型
・クラウド型

統合型

企業のデータを一つに統合して管理し、異なる業務の連携などの手間を削減することで業務の効率化を図ります。現場の状況や経営状況のデータがリアルタイムで確認でき、経営層はより迅速な判断が下せるようになります。すべての業務一式をカバーするオールインワンタイプです。
統合型ERPを導入し、活用する事で得られる効果は以下の通りです。
・企業システムの一貫性が図れる
・どこからでも情報を取り出せる
・経営の見える化を向上させる
・経営がスピードアップする
つまり、導入する事によって業務の効率化・可視化が可能となるのです。

業務ソフト型

管理会計システムや発注管理システムなど、特定分野業務の一元管理が行えます。特定分野のみ対応なERPですので、他の導入形態よりも費用が安く、導入期間も短いのが特徴です。

コンポーネント型

既存の業務システム(会計、販売、生産、総務、現場など)の最適化を目的としたシステムであり、既存システムとの連系が容易に行う事が可能であり、情報システムの強化や業務の効率化が図れます。また、必要な機能をその都度追加してシステムの拡張を行えるため、費用や開発期間短縮といった特徴があります。

クラウド型

ERPは個別に運用していた業務管理を連系させ、コスト削減や生産性向上を目指し、デーータを効率よく運用していくためのシステムとして開発されてきました。しかし、近年ビジネスのグローバル化やニーズの変化が起こり、従来型のERPではコストや人的リソースが増加している問題が発生していました。そのような状況の中、柔軟性が高いクラウド型が注目を浴びるようになりました。
クラウド型は、インターネットを介してアプリケーションのみを使用できる環境を提供することで、企業におけるサーバー管理や設定の負荷を削減すると同時に、短時間の導入が可能なタイプです。SaaS(Software as a Service)型による提供なども始まっており、SaaSを使用したクラウド型ERPを導入する企業が増え続けています。

製造業が求めるERPとは

一般企業向けのERPをそのまま製造業に導入しても合致しないのは明白でしょう。製造業が求めるERPの機能とは「生産管理システム」です。

製造業は常にQCD(品質・コスト・納期)の基準を満たす必要があり、これらは1つでも欠かせない要素であり、最終的に顧客満足度に繋がってきます。例えば、品質と納期を満たせても、コストがかかりすぎる案件の場合、収益性の低いビジネスを継続する事になってしまいます。

ERPには既存の生産管理システムと連系することを強みにしている製品もありますが、やはり製造業において生産管理システム自体がERPに標準搭載されている製品の方がデータの連系性や業務効率性を大幅に高めてくれるでしょう。
ERPの必要性を感じている経営者には「経営及びシステム全体を見直したい」というニーズがあり、それは単に生産業務の在り方を変えたいだけではありません。
以下、製造業経営者が抱えがちな課題を挙げてみます。
・データ管理をExcelにしたための人的ミスや無駄な作業の排除
・海外拠点、海外工場を含めて統合的な情報管理
・既存の生産管理システムとその他の機関システム間で発生している二重管理の排除
・無理にMRP型システムを応用しているせいで上手くシステム間連携が取れていない状況
・あらゆる部門の情報を可視化して、経営計画や意思決定に役立てる
・多品種少量生産に柔軟に対応する事で、顧客の受け口を広げる

製造業が抱えている課題は非常に多く、特に生産管理システムに重点をおいたERP導入を目指す事で、経営課題を解決しつつ、生産性を大幅に向上する事が可能となります。

製造業においてEPRとMESは相性がいい

MES(Manufacturing Execution System)は製造実行システムです。主に、製造工程の可視化及び管理、作業者への支持・支援を行うための情報システムであり、製造現場の改善活動に焦点を当てています。「良い製品を、限られた資源の中から、効率よく製造する」ことを目的として現場情報を管理します。生産管理システムの一機能として組み込まれていることも多く、「工程管理」の概念に近いシステムだと言えます。

ERPとMESの違いは、以下の通りです。
ERP:経営層の意思決定を助けるためのツール
MES:QCD(品質、コスト、納期)を改善するためのシステム
最近では生産管理システムの1つとしてMESを組み込んでいるERPも存在します。
この両者を連携させることで、より高度な業務効率化を狙えます。ERPで俯瞰的に生産管理を行い、現場の業務改善にMESを活用すれば、隙のない効率化が実現するでしょう。

生産性を更に上げるPSI

PSI(Production Sales Inventory)とは「製造」「販売」「在庫」の頭文字を取ったものであり、それぞれを同時に計画するシステムを同時に連動させ、最終的に適正な在庫維持を無駄なく効率的に行なっていくことを目的としています。このPSIも生産管理に関わるシステムとして重要な要素になってきます。

販売部門から数カ月先まで月別に作成された販売計画を提示してもらい、生産能力と在庫を加味しながら、大枠となる生産量を決定します。月別→週別→日別と細分化させ、より制度の高い情報として確定していく仕組みになっています。そうすることで、販売→生産→在庫といった一連の流れで計画を立て、必要なときに必要なものを必要な分だけ供給するような製造が実現できるのです。ただし、これらの連携は部門をまたぐため、経験則による部門独自での微調整なども行なわれ、厳格に連動させることは容易ではなく、計画通りに在庫調整できないといった問題も起こってしまいます。効率的な経営を行っていくのにPSIは必要不可欠ですが、部門横断的な計画となるため、ERPによるデータの一元管理が必須です。連携する事によって、より高い生産性をアップする事ができるでしょう。

まとめ

製造業とERPについて解説してきました。以下、まとめとなります。
・ERPの最大の特徴は情報の一元管理
・製造業が求めるERPの機能とは「生産管理システム」であり、多くの経営課題を解決する
・ERPはMESやPSIと連携する事によって、更に生産性をアップする事が可能

製造業では生産管理が業務の中心であると言えます。生産が中心である、ということは業務面で周囲にたくさん関係のある業務が存在することになります。
生産管理や経営全体に対して課題を感じている場合、まずはERPパッケージを導入し、必要に応じてMESやPSIとの連携を行い、企業全体の業務最適化を行う事で、自社にとって最適な統合管理システムの構築を目指すのが良いでしょう。