産業は人間が生活するうえで欠かせないものであり、これがないと経済が成り立ちません。
現在の産業は、イギリスの経済学者であるC・G・クラーク氏が考案した分類方法により、「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」の3つに分類されます。
製造業は第何次産業にあたるのでしょうか。今回は、製造業は第何次産業にあたるのか、そして産業とは何かについて解説します。

産業とは

産業とは、人々が生活するうえで必要とされるものを生み出したり、提供したりする経済活動のことです。

産業は、分析の枠組みや目的に応じて分類されます。基礎的・標準的な分類として、公的な統計において標準産業分類が設定されています。

産業分類は、経済学が学問として確立しはじめた当初から経済学者によって討論されてきました。

1758年、重農学派のフランソワ・ケネーは『経済表』において、地主階級、生産階級(農業)、不生産階級(商業)の3分類を示し、農業だけが生産的であると考えました。

カール・マルクスは『資本論』第2巻(1885)で、第一部門(生産財生産部門)と第二部門(消費財生産部門)という産業間分析を行いました。

経済発展を産業構造の変化という視点でとらえるようになり、1930年代に入ると本格的に産業分類が研究されるようになりました。

クラークの産業分類

1941年、『経済的進歩の諸条件』において、コーリン・クラークは産業を第一次産業、第二次産業、第三次産業に3分類し、経済発展につれて第一次産業から第二次産業、第三次産業へと産業がシフトしていくことを示しました。これは1690年にウィリアム・ペティが『政治算術』で述べた考え方を定式化したもので、両者にちなんで「ペティ=クラークの法則」と呼ばれています。

クラークの産業分類は以下の通りになります。

第一次産業 - 農業、林業、水産業など、狩猟、採集
第二次産業 - 製造業、建設業など、工業生産、加工業。電気・ガス・水道業
第三次産業 - 情報通信業、金融業、運輸業、小売業、サービス業など、非物質的な生産業、配分業

クラークの産業分類に関して言われている批判は以下の通りです。
・第三次産業に単純労働が含まれ、後進的な産業が先進的な産業と同じ扱いになっている
・経済発展につれて産業内部で生じている構造変化をとらえきれない
・第三次産業が、資本集約的産業、労働集約的産業、知識集約的産業も含む雑多産業の集合体になっている
・雑多な産業を単一のくくりで単純化している

産業分類とは

産業は、イギリスの経済学者であるC・G・クラーク氏が考案した分類方法により、「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」の3つに分類されます。

第一次産業:採取産業(自然界でそのまま得られるもの)
第二次産業:加工生産
第三次産業:それ以外のサービスを提供するもの

産業の流れを、パンを例に紹介します。

【製品:パン】
第一次産業:農業(麦の採取)
第二次産業:製造業(食品業界、パン製造)
第三次産業:運輸(配送業)、小売業、飲食業、サービス業

一般的に、経済が発展するにしたがって、経済の中心は第一次産業から第二次産業、そして第三次産業へと移り変わっていきます。発展途上国では第一次産業で働く人の割合が多いですが,先進国になるにつれて,第二次産業,第三次産業の割合が増えていきます。

分類された産業について解説していきます。

第一次産業とは

第一次産業とは、自然界に対してはたらきかけ、作物を作ったり採取したりする、私達の生活を支える上で欠かせない産業です。農業、林業、漁業などが当てはまります。水産加工のように、天然資源を加工して食品を製造する業種は製造業に分類され、第一次産業には含まれません。

日本では、日本標準産業分類における下記の産業を第一次産業としており、クラーク氏の考案した分類では、鉱業は第一次産業、公益事業は第二次産業に該当し、日本の産業分類と少し異なっています。

・大分類A 農業、林業
・大分類B 漁業

「日本標準産業分類」とは、「標準産業分類」の日本版を指します。1949年(昭和24年)10月にISICに準拠する形で設定され、日本の公的統計における産業分類を定めた総務省告示であり、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として改定が重ねられました。2002年に行われた大改定で情報通信業が新たな産業分類として設定されました。

農業・建設業・製造業・卸売業・小売業・金融業・医療・福祉・教育・宗教・公務などのすべての経済活動を、大分類・中分類・小分類・細分類の4段階に分類しています。

「標準産業分類」(ISIC:International Standard Industrial Classification of All Economic Activities)とは、各種の統計間の比較可能性を確保するために、統計調査の対象となる各種産業の標準的な分類体系を定めた統計基準を指します。1948年に国際連合の統計委員会により設定されました。各国においても、統計の国際比較を可能にするため、産業分類をできるだけISICに準拠して作成するよう配慮がされています。

第二次産業とは

第二次産業とは、自然界から採ったりした物を使って加工する産業で、金属や岩石などを採掘する「鉱業・採石業・砂利採取業」、土木工事や建築工事を行う「建築業」、様々な品物を製造する「製造業」が当てはまります。特に製造業は幅が広く、食品や衣服といった身近な製品から、業務用の機械、鉄道や航空機などの輸送機までもが対象となります。

日本における第二次産業は、鉱業や建築業、製造業といった業界が含まれます。なかでも製造業は対象となる製品の幅が広いことが特徴であり、食料品や衣服、化粧品といった生活に密着している製品だけでなく、業務用の機械や航空機なども対象となっています。

「日本標準産業分類」をもとに、日本における第二次産業に該当する業界は以下の通りです。

・大分類C 鉱業、採石業、砂利採取業
・大分類D 建設業
・大分類E 製造業

現代の製造業は多様化しており、古典的な第二次産業の枠内に収まりきらない業態も出てきています。たとえば、アパレル等ファッション関連では、嗜好の移り変わりが早いので変化を迅速に生産に反映させるために、製造から小売までを一貫して行う「製造小売業」が主流となっています。

第三次産業

第一次産業、第二次産業のどちらにも当てはまらない産業です。商業、金融業、運輸業,情報通信業、サービス業などが当てはまります。第三次産業は商品やサービスを分配することで富を創造するという特徴があります。第三次産業は現代の日本では経済の中核をなしていますが、その複雑さや多様さのため、経済統計の整備が最も遅れている産業でもあります。

「日本標準産業分類」において、下記の産業を第三次産業としています。これは電気・ガス業を第二次産業ではなく第三次産業に分類している点で、クラークによる定義とは異なります。なお、日本標準産業分類において、製造業に分類されていた新聞業および出版業は、2002年の分類の改訂によって、第三次産業に含まれる情報通信業に分類されました。

・大分類F 電気・ガス・熱供給・水道業
・大分類G 情報通信業
・大分類H 運輸業、郵便業
・大分類I 卸売業、小売業
・大分類J 金融業、保険業
・大分類K 不動産業、物品賃貸業
・大分類L 学術研究、専門・技術サービス業
・大分類M 宿泊業、飲食サービス業
・大分類N 生活関連サービス業、娯楽業
・大分類O 教育、学習支援業
・大分類P 医療、福祉
・大分類Q 複合サービス事業
・大分類R サービス業(他に分類されないもの)
・大分類S 公務(他に分類されるものを除く)
・大分類T 分類不能の産業

日本における産業構造の歴史

戦前までの日本は、農業や林業、漁業が盛んで、第一次産業が経済の中心であり、各家庭の生活費は、ほとんど食料に使われたと言われています。

1950年頃になると、戦後の経済成長と技術発展に伴い、テレビや洗濯機などの家電が登場し、車も普及することで、第一次産業時代からものづくりを行う第二次産業時代へとシフトしていきました。

日本の第二次産業は「加工貿易」によって発展し、主に自動車や電気製品などで加工貿易を行っていました。
加工貿易とは資源を輸入し、その資源を使って国内で作った製品を輸出するという貿易のことです。

しかし、人件費を安く済まそうと、第二次産業を行っている企業が海外へ工場を移転してしまいました。それだけでなく、低コストを可能にする新興国の台頭、日本国内の労働力人口の減少、海外から安い農産物、畜産物の輸入など、第一次産業、第二次産業ともに減少傾向に陥り始めます。第三次産業はそんな1970年代後半から台頭しました。

第四次産業革命到来

製造業は、日本経済の根幹を支えている大きな業界のひとつであるため、製造業の衰退は、日本経済全体の衰退に直結しているとも言えます。

1990年代初頭に日本でバブル崩壊が起こり、長期間に渡って日本は不景気・急激な円高が起こり、製造業の事業者数や従業員は大きな減少をみせはじめました。

日本は優れた生産方式によるコスト削減、顧客のニーズをくみ取った商品開発により、2017年10月〜12月期のGDPで過去最高水準の551兆円を記録し、経済状況を大きく回復させました。

しかし、現代は「ものを作れば売れる」時代ではありません。IoTやAIの活用が必須である「第四次産業革命」が到来している現在、意識改革をしなければ製造業は生き残れない状況にあります。

まとめ

製造業は第何次産業にあたるのか、そして産業とは何かについて解説してきました。以下、まとめになります。

・イギリス経済学者C・G・クラーク氏は産業を「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」に分類した
・製造業は第二次産業に分類される
・経済が発展するとその中心は第一次産業から第二次産業、そして第三次産業へと移り変わる

産業は人間の生活において欠かせないものであり、発展し続ける事で経済を回しています。
第一次産業、第二次産業、第三次産業の関係性はどれも互いを必要としており、経済を成り立たせるためにはどれも欠かすことはできないといえるでしょう。
また、多様化する価値観やニーズにより、産業に求められるものは異なり、「製造小売業」のように形態を変え、ますます進化していくことでしょう。