板金加工、プレス加工とは、それぞれ金属を加工する方法です。この2つの加工方法は混同されがちですが、似ているようで違う加工方法です。
両者とも多くのメーカーで採用されている加工方法であり、日本の製造業において非常に重要であるといえるでしょう。今回は板金加工とプレス加工の違いについて解説します。

プレス加工と板金加工の違い

プレス加工と板金加工の大きな違いは、技術力や経験値の差が製品に影響しやすいかどうかです。

プレス加工は一度金型を作ってしまえば、材料を入れるだけで同じ形状製品を誰にでも大量生産できます。しかし、板金加工は手作業の工程がほとんどであり、それぞれ担当者の技術力により精度が異なってきます。そのため、板金加工は小ロット生産や完全受注生産などに向いています。

他にも板金加工の方が初期費用を安く抑えられたり、ちょっとした曲げ加工や抜き加工などに迅速対応できます。短納期や即日納品も可能なため、試作品などの制作に向いているといえるでしょう。プレス加工の方は「様々な形状に加工できる」「検品作業なども定量化しやすい」「材料から排出される切り屑なども少ない」「一度セットした後は手を加えることなく半自動的に運転が開始できる」などの違いがあります。

板金加工とは

板金加工とは金属の板材を切断したり曲げたりして、任意の形状に加工する作業のことです。適用範囲は広く、金属製品の部品にはほぼ使われているといえるでしょう。

元々1枚の薄板に対し、曲げ、溶接、表面加工を行うことで目的の形状を得られます。また、その他にも以下の事が得られます。

・強度の向上
・軽量化
・複雑形状の制作
・費用の節約

板金加工の種類

板金加工の種類は以下の通りです。

精密板金

1つ目の種類は「精密板金」です。

精密板金は、汎用の金型を用いた板金機械を使い、形成する方法です。機械を使用しますが、位置調整、工具付け替え、プレス量などは全て手動であり、少量から中量生産に向いています。
精密板金では、切断加工や曲げ加工、抜き加工など、幅広い加工に対応することができます。ただし、形状によっては加工や組み立ての際に、部品や工具の作業位置を指示・誘導するために用いる器具を作成する必要があり、コストが上がる場合もあるので注意が必要です。

手板金加工

2つ目の種類は「手板金加工」です。

手板金加工とは、板金をハンマーなどで叩いて形を形成する方法です。精密板金では対応できない加工で使われることが多く、少量生産や完全受注で使われます。
新幹線の先頭車両の流曲線のような複雑な形状にも手加工板金の技術が用いられています。

板金加工のメリットとデメリット

板金加工のメリットとデメリットは次のようになります。

板金加工のメリット

板金加工のメリットは以下の通りです。

・発注者にとってイニシャルコストが少なく済む
・安く早く調達できる簡易金型などを用いるためコストを抑え、リードタイム短縮可能
・ちょっとした曲げ加工や抜き加工などに迅速対応できるため、短納期や即日納品も可能
・試作品などの制作に向いている

板金加工のデメリット

板金加工のデメリットは以下の通りです。

・人の手に頼る部分が多い
・一日に制作できる数が限られているため大量生産には不向き
・製品の品質が職人の経験に左右される
・専用の金型を要する複雑な加工に対応できない

プレス加工とは

プレス加工とは、加工される材料を金型に圧着して形を作る作業のことです。
プレス加工には、金型、加工物、プレス機械の3つが必要です。金型に工作物を挟んでプレス機械に乗せます。そうすることによって、金型の形に変形した製品を作ることが可能です。低コストでの大量生産が得意なため、プレス加工は製造業にとって欠かせない加工方法といえるでしょう。

プレス加工をする際に必要な工程は以下の通りです。
①雄型と雌型で1つになる金型を設計する
②設計段階で、金型の種類やセットするプレス機などを決める
③実際に金型を作り出し、生み出す製品のテスト加工を行う

複数回テスト加工を重ねることで、製品精度を高めていくことができます。
プレス加工において、金型の精度が製品の品質を保つ上で非常に大事になってきます。
なぜなら、金型の設計や加工に不備が生じると、製品にバリが出る、形状に不具合が生じるなどの問題が発生するからです。

プレス加工において、プレス機でかけることができる荷重などは重要ですが、金型は精度が悪いと良い製品を生み出すことができず、製品の良し悪しに直結する重要な部分といえるでしょう。

金型の種類

プレス用金型は、製品の形状や生産量などによって使用する大きさが次のように分かれます。

順送型

1つ目は「順送型」です。

順送型は、複数の成形機能を1つの型にまとめた金型です。別名「プログレ(PRG)」と呼ばれています。特徴として、1つの金型にせん断加工や絞り加工、曲げ加工などの成形工程を備えています。ロール状に巻いてある被加工剤を使用することが多く、プレス機で少しずつ順送りしていくことで加工が完了します。
また、加工スピードが速く生産性も高いため大量生産に向いているという特徴もあります。ただし、1つの金型に1製品の加工工程をまとめるため、設計や加工難易度が上がってしまい、金型の生産コストが非常に高くなってしまいます。

単発型

2つ目は「単発型」です。

単発型は「絞り加工のみ」「せん断加工のみ」といった、1つの金型に1機能しかない金型のことです。被加工剤も人力で入れることが多く、自動生産にはあまり使われないという特徴があります。型構造が簡単であり、金型の作成コストが比較的低いので、製品形状が簡単で小ロット生産をする製品に向いています。

単発型

3つ目は「トランスファー型」です。

トランスファー型とは、トランスファー加工に使用される金型です。
トランスファー加工とは、各工程が独立した型を一台のプレス機械内に1列に配列し、クランクシャフトから駆動して、プレス本体と同期したトランスファー(搬送)機構で移送させながら連続自動加工する加工方法です。1製品に対して工程を分けた単発金型を複数用意し、1工程目から順番に並べてプレスしていきます。
被加工剤を自動で運ぶトランスファープレス機セットの搬送機構があるため、自動で製品を成形できる特徴があります。順送型と比べると加工速度は劣りますが、単発型を複数並べているため形状を大きく変える工程のプレス加工にも対応可能です。

プレス加工の種類

プレス加工は金型やプレス方法が豊富なため、様々な形のパーツを作る事ができます。身のまわりで利用されている製品の多くにプレス加工が使用されています。
特に多いのがドアや天井といった自動車部品であり、エアコンやパソコン携帯電話といった小さなものやICチップや食器類などにもその技術は使われています。

プレス加工の種類は以下の通りです。

せん断加工

1つ目の種類は「せん断加工」です。

せん断加工とは、板状の被加工材に外力でプレスして、完全に切断分離する加工法のことです。単に切るだけでなく、切り抜いたり、外形を抜いたり、穴をあけたりする加工法も含まれます。私達の生活でよく使われているせん断加工品だと、二穴の穴あけパンチなどが該当します。

曲げ加工

2つ目の種類は「曲げ加工」です。

曲げ加工とは、プレス加工機で材料を曲げる加工法のことです。被加工材の引張力と圧縮力を利用することで材料を曲げています。曲げの形状によって種類が以下のように異なります。
・V曲げ
・L曲げ
・U曲げ
・カール曲げ
・ヘミング(アザ折)曲げなど

私達の生活でよく使われている曲げ加工品だと、書類をひとつにまとめる金属製のクリップなどが該当します。

絞り加工

3つ目の種類は「絞り加工」です。

絞り加工とは、被加工材に引っ張り力を加えながら、プレス機の「パンチ(雄型)」と「ダイ(雌型)」に沿った継ぎ目のない中空容器を作る加工方法です。おわんのような底付き形状などを作り出すことができます。

私達の生活でよく使われている絞り加工品だと、金属製やプラスチック製のボウルなどが該当します。

プレス加工のメリットとデメリット

プレス加工のメリットとデメリットは以下の通りです。

プレス加工のメリット

プレス加工のメリットは次のようになります。

・製品の品質が職人の技量などに左右されない
・同じ高品質な製品を大量にロスなく作ることができる
・検品作業なども定量化しやすい
・材料から排出される切り屑なども少ない
・一度セットした後は手を加えることなく半自動的に運転が開始

プレス加工のデメリット

プレス加工のデメリットは次のようになります。

・成形できる形状に制限があり、単純な形しか作ることができない
・金型製作や設備投資が高価なため、小ロットで試作品を作ってみることが困難
・大きな力で金属板を打ち出す作業のため、大事故につながる可能性がある
・プレス加工後に発生するバリ除去など、熟練の技術が必要

まとめ

板金加工とプレス加工の違いについて解説してきました。以下、まとめとなります。

・板金加工とプレス加工の大きな違いは、技術力や経験値の差が製品に影響しやすいこと
・板金加工は職人の技量に頼る所があり、少量生産に向いている
・プレス加工は一度金型を作ってしまえば、材料を入れるだけで同じ形状製品を大量生産でき、誰にでも生産することができる

板金加工とプレス加工は、どちらも私達の生活にとって欠かせない技術です。
板金加工は職人の技術や経験値に頼るところがあり、大量生産には向いていません。しかし、ちょっとした曲げ加工や抜き加工などに迅速対応できるため、短納期や即日納品を可能にします。
プレス加工は金型とシステムさえ作ってしまえば、あとは材料を入れるだけで同じ形状製品を誰にでも作り出すことができます。しかし、金型・システム作成などの初期費用が高いです。
どちらもメリット・デメリットがあり、必要な形状や用途に応じて使い分けていくのがよいでしょう。