日本の製造業は現在、たくさんの課題に直面しています。人手不足や世界から後れを取っているDX化など、いずれも性急に課題解決すべきものばかりです。
その課題を解決するため、ベンチャー企業の多くがAIやIoTなどのテクノロジーを駆使して世界に挑戦しています。
ベンチャーとは、企業として新規の事業に取り組むことをいいます。つまり、ベンチャー企業とは、独自のアイディアや技術をもとに、最先端技術や新しいビジネスモデルを展開し、新たな価値の創造を目指す企業の事です。主に成長過程にある企業であり、新興企業と同じ意味として用いられる事もあります。投資機関から資金援助を受けている企業なども含まれ、ほとんどが小規模から中規模です。
ベンチャー企業やスタートアップの世界で「ものづくり」が改めて注目を集め、大手の製造業は新たな技術や事業分野への取り組み「オープンイノベーション」を狙っています。ベンチャー企業の強みは柔軟な発想力とスピードを活かした革新的な商品を世に打ち出す事でしょう。現在、製造業における「ものづくりベンチャー企業」が注目を集めています。
今回は製造業とベンチャーについて解説していきます。

ものづくりベンチャー企業とは

「ものづくりベンチャー」とは、既存のハードウェアを使って事業を行う、というものではなく、独自のハードウェアの一部もしくは全てを開発し、そのシステムを利用して情報やサービスを提供するベンチャー企業の事をいいます。ハードウェアの開発だけでなく、ソフトウェアと融合して事業展開している企業も多く現れ始めています。

ものづくりベンチャーの4つの分類

ものづくりベンチャーは4つに分類する事ができます。

①ビジネスモデル型:ハードウェアを通してサービス提供・販売している企業
②開発体制型:ハードウェアの一部もしくはすべてを自社開発している企業
③業界推進主体型:自ら主体となり業界の推進に臨む企業
④革新的成長型:革新的な事業によって飛躍的な成長を目指す企業

①ビジネスモデル型:ハードウェアを通してサービス提供・販売している企業

開発した製品やロボット、デバイス、IoT機器を販売するだけでなく、開発したハードウェアを利用して様々なサービス提供を行っているベンチャー企業です。日常のちょっとした問題や疑問からアイディアを見つけ、製品化する事で事業展開しています。

②開発体制型:ハードウェアの一部もしくはすべてを自社開発している企業

既存のハードウェアを使って事業を行わず、独自のハードウェアの一部もしくは全てを開発し、そのシステムを利用して情報やサービス提供するベンチャー企業です。ハードウェア開発だけでなく、ソフトウェアと融合して事業展開している企業が多いようです。

③業界推進主体型:自ら主体となり業界の推進に臨む企業

自らが主体となって、常に新しいことへ果敢に挑戦し事業を推し進めることで、業界の発展にも貢献しているベンチャー企業です。農業や医療など、1つの業界や分野にとどまらず、たくさんの業界や分野で解決するためのアイディアを生み出し、研究開発を行っています。

④革新的成長型:革新的な事業によって飛躍的な成長を目指す企業

ロボットやAIを利用し、独自のハードウェア開発をすることで今後起こりうる問題解決するような飛躍的発展が期待されているベンチャー企業です。世の中にまだなかったものを生み出し、世界に衝撃を与える企業が多いですが、十分な資金を確保できず日の目をみることがない企業でもあります。

日本ベンチャー大賞

日本ベンチャー大賞とは、表彰することで社会全体の起業に対する意識を高揚させる事を目的としています。
インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰し、起業を志す人や社会に対し積極的に挑戦することの重要性や起業家の社会的評価を一般に浸透させたいという思いが強く込められているようです。
元来、何らかの社会的課題やニーズを出発点にベンチャー企業はインターネット関連サービスやソフトウェア開発事業を多く手掛けていました。しかし、それだけでは企業や個人のニーズに対応できなくなり、専用のハードウェアとソフトウェア技術を組み合わせた製品やサービス提供する「ものづくりベンチャー企業」が躍進してきているのです。

海外ほど投資が浸透していない日本

ベンチャー企業が更なる加速を続けるには投資が必要になってくるでしょう。
日本では大企業がベンチャー企業などに積極的な投資を行うといった文化が海外ほど浸透していません。VC(ベンチャーキャピタル)を初め数多くの投資家が日本でもハードウェアスタートアップに投資を行っていますが、本格的に事業を行うための投資金額に全く到達していないというのが現状です。
一方、海外では米国のGoogleやAmazonなど大企業による投資やM&Aが盛んに行われ、一度の投資で100億円といった単位の投資資金も珍しくありません。AIなどの先端情報技術もハードウェアに依存しているため、米国や中国では今後ソフトウェアスタートアップと並び、大企業へと成長を遂げるハードウェアスタートアップが増えていくと予想されています。
しかし、日本においても大企業の間で投資文化が経験を積み重ねていけば、大規模な投資を行う企業も増えていくのではないかと考えられているようです。既に日本においてもCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の取り組みを通じて投資している大企業が増えつつあります。
CVCの投資対象になりやすい企業は「動きの見えるベンチャー」だと言われています。何故なら、研究開発型のスタートップのように、事業内容がはっきりしていて、明確なガイドラインを持ってプロジェクトを実行しているスタートアップの場合、安心して投資ができるからです。

日本のものづくりベンチャー企業の事例

日本におけるものづくりベンチャー企業はどのような事業展開を行っているのでしょうか。その事例を紹介します。

スマート電池を使った新しい見守りサービス(ノバルス株式会社)

ノバルス株式会社はワイヤレステクノロジーや省電力電源制御技術を活かしたIoT事業を展開しています。2016年にグッドデザイン賞受賞など、他にも様々な賞を受賞しています。「MaBee(マビー)」は単三電池商品であり、乾電池で動く電化製品にセットするとスマートフォン専用アプリから操作する事ができます。たとえばMaBeeをテレビリモコンに設置するとテレビの電源オンオフを察知して、問題なく生活していることを通知としてスマホで受け取る事ができます。テレビ以外にもMaBeeが設置できる家電製品ならあらゆる電源のオンオフが察知可能ですので、特別な作業がいらず、今使っている家電を買い替えることなく離れて暮らす年配の両親や留守番させている子供の見守りが可能です。創業当初、クラウドファンディング「Makuake」で資金調達を行い、目標金額を1時間で達成し、最終的に支援者898人、約640万円を調達することに成功、事業化を実現させました。

世の中に必要とされているものを製造する(株式会社ロビット)

株式会社ロビットは暮らしの中で感じる不便さを改善するためのものを開発しているベンチャー企業です。たとえば朝の目覚めをスムーズに行うため、自動でカーテンの開け閉めができる「monin’ plus」は不在時の防犯対策にもなります。また、高齢化社会に伴う人材不足を補う製品検査自動化システム「TESTRAY」は、ソフトウェアとハードウェアを融合することで高い検査の精度を誇っています。2017年にグッドデザイン賞を受賞し、様々なイベントに参加するなど積極的です。圧倒的なスピードで、世の中に必要とされているものを製造する事をコンセプトに事業展開しています。

常に開発者の目線に立ち、幅広い3Dプリンター制作を素早く行う(株式会社クロスエフェクト)

株式会社クロスエフェクトは3Dプリンターを使った試作品をスピーディーに製造するベンチャー企業です。常に開発者の目線に立つことで、想像以上の完成度が高い試作品を短時間で完成させます。それにより、製造の時間とコストが大幅に削減されているのです。
パナソニック・エボルタのオリジナルロボット試作や自動車のホイールから医療機器まで、幅広い制作を素早く行うベンチャー企業として有名です。

未来に起こる課題をロボットで解決する(株式会社未来機械)

株式会社未来機械は、未来に起こる課題をロボットで解決する事を目的としたベンチャー企業です。太陽光発電のためのソーラーパネル掃除ロボなど、水を使わないブラシで掃除を行い、人が手作業で掃除をするよりも1/5のコストに抑える事が出来ます。大がかりなソーラーパネルの設置が計画されている中東地域への輸出を盛んに行っており、太陽光発電の需要が高まると、今後普及が増えていくかもしれません。

まとめ

製造業とベンチャーについて解説してきました。以下、まとめになります。

・独自のアイディアや技術をもとに、最先端技術や新しいビジネスモデルを展開し、新たな価値の創造を目指す成長過程にある企業をベンチャー企業という
・専用のハードウェアとソフトウェア技術を組み合わせた製品やサービス提供する「ものづくりベンチャー企業」が躍進してきている
・企業投資の浸透率が低い日本でも徐々に投資意識が普及していき、意識の高いベンチャー企業と手を組んだ製造業は増々活躍していくだろう

製造業において、ターゲット顧客に対する適切なリーチはとても困難です。しかし1万社以上の研究開発者が閲覧する、日本最大級のものづくりWebメディアのみんなの試作広場を活用すれば、自社の商品や魅力を届けることができるでしょう。
ベンチャー企業は素晴らしいアイディアと技術があっても、資金が足りず商品開発の実用化にまで至らなかった企業も数多くあるでしょう。そうならないためにはクラウドファンディングや企業投資が必要となってきます。ものづくりベンチャー企業はこれからの社会のニーズに応えて増々飛躍していくことが予想されますので、投資対象として検討するのもいいかもしれません。これからのものづくりベンチャーに期待です!