製造業の直間比率とは? 目安にして何が問題なのかを見つめなおそう!
税の割合で使われる直間比率ですが、企業の場合、直接部門と間接部門の割合という意味になります。他社との直間比率を気にする企業は少なくありません。しかし、利益を考える時には間接比率が多いことが問題ではなく、その解決策は直間比率ではなく別の所にある場合が多いです。今回は製造業の直間比率について解説します。
直間比率とは
直間比率とは、国税や地方税に占める直接税と間接税の割合のことです。
国税の直間比率はおよそ直接税が6割、間接税が4割、地方税の直接税が8割、間接税が2割の構成になっています。
直接税とは、所得税や法人税など税金の負担者と納税者が同じ種類の税金を指し、納税者の経済的能力に応じ課税が可能となります。
間接税とは、消費税や酒税、タバコ税など負担者と納税者が異なる種類の税金を指し、経済能力に応じた課税が困難となります。
直間比率は、その税制が公平であるか否かを示す指標となります。
日本は第2次世界大戦前の国税収入は間接税に大幅に依存していましたが、1949年にアメリカ合衆国の税制使節団によって出された税制改革に関するシャウプ勧告をうけ、直接税中心の税体系に改められました。
1955年度の国税と地方税を合わせた直間比率は直接税 59.7%、間接税 40.3%で、その後しばらく安定していました。しかし、1970年度からは直接税が 70%前後で推移してきたため、税収構造が直接税に片寄り、給与所得者を中心とした納税者に重税感や不公平感が広がっていきました。政府は所得税の減税や、1989年に消費税を導入することで直間比率の是正をはかりました。
近年は景気の影響が少なく、安定した税収が見込める間接税の比率が高まる傾向にあります。
間接税、主に消費税を上げることによって、安定した税収の割合を高めようという考え方を「直間比率の見直し」といいます。ヨーロッパ諸国の間接税比率が高いということが引き合いに出されて、日本も間接税を上げるべきだという考え方や直間比率は国の歴史や国民性によって左右されるという意見などが飛び交い、直間比率の見直しは常に議論の的となっています。
企業における直間比率とは
企業における直間比率とは、直接部門と間接部門の比率、つまり直接収益に貢献している人材とバックオフィスやサポート業務のように間接的に収益に貢献している人材の比率を指します。
どちらかの部門に人数が偏りすぎていないかを検証する際の基準として使われ、理想とされる直間比率は企業の規模や取扱商品・サービスの種類によって異なります。
直間比率は正確な統計がないため、明確な議論はできませんが、多くの経営者は他社との比較を非常に気にしています。収益拡大を行うには直接部門の人員を増やし、間接部門の人員を削減することが効率的であるという認識からです。
直接コストを下げるための間接コストの投入は、より「効果的な合理化案」を樹立し、結果としての「実効」をあげなければなりません。
しかし、投入効果と間接コストを下げることとは直結するわけではなく、間接コストは「間接コスト自体」で下げていかなければいけません。
業種にかかわらず1つの目安として、直接部門と関節部門の比率が「7:3」~「9:1」になっているかどうかを確認するといいでしょう。7対3と9対1では約30%も利益が違い、原価が3割安くなるため、これだけ違うとかなり優位に立てます。
直間比率を9対1に徹底した会社
直間比率を9対1に徹底して、高い利益率をあげている会社があります。
その会社は、1980年代後半に上場準備で経理現場を見つめなおすと、入力時のミスによる出荷、在庫管理の数字の間違いが多いことに気づきました。
入力を間違える、チェックしても見逃してしまう。決算に何日もかかる理由はこうした間違いを修正するために起こる事がわかりました。
これを解決するために導入されたのが「ダブル入力」です。
ダブル入力とは、二人に同じ伝票を入力させて、二つの数字が一致した時だけ有効とします。
二人分の労働力が発生するためコストが高くなるという意見もありましたが、少人数で確実に間違いを見つけることができるため、最終的に安く済むという結果になりました。
また、出荷の際の間違いも無くすために自動倉庫を作り、コンピュータシステムも一新しました。
さらに、インドネシア工場において日本人の管理職を減らし、取締役を現地の人に任せると生産性の向上につながりました。
なぜなら、日本から一人赴任すると給料以外に月100万円かかるからです。
その後、本社を縮小し、自動化できるところは自動化してしまうことで、直間比率9対1を実現し、高い利益率を出せるようになりました。
直接と間接の区切りがあいまいになりつつある
上記のように成功している会社もありますが、現在のビジネスにおいて直接部門と間接部門のような区分けには大きな意味がなくなりつつあります。
たとえば、営業部門は営業人員数の増員が重要ですが、人が直接営業先へ出て営業するだけでなく、広告やネットでの営業、提携などのコラボレーションによる営業など手段は様々です。営業をする人は直接部門かもしれませんが、ネットの企画や運用をしている人材は直接部門とはっきりと分類することが難しいです。それぞれの会社によってビジネスモデルは異なり、直接、間接の定義自体大きく異なってきます。
問題なのは間接比率が高いことではない
間接比率が高いことが問題なのではなく、収益に貢献していない人材が多く存在しているかもしれないことが問題といえるでしょう。
直間比率を気にする企業の多くは、営業や生産の第一線で活躍が困難な高齢社員を間接業務に配置するといったような、間接部門を活性化しない人材の配置場所に使っている場合が多くみられます。その場合、間接業務を背負っている優秀な人材と直接では使えない人材が混ざり合ってしまうため、間接部門のコア社員達にとっては非常に仕事がやりにくい状況になってしまいます。
悪いところを証明する手段が十分でないため、理論的な検証ができない直間比率の他社比較に頼りたくなります。しかし、実際には他社比較よりも自社の直間比率推移のほうが悪いところを証明する手段としてわかりやすいです。また、直接部門と間接部門の境界線がわかりづらくなってきているため、各部門や機能の人員数比率や人件費比率を管理した方が現実的といえるでしょう。
自分達の会社の過去の比率を管理せずに、突然定義があいまいな他社との比較を用いてもほとんど有意義な情報を得ることは難しいです。
多くの企業の場合、問題は直接部門、間接部門の比率ではなく、別の所にあります。そのため、直間比率を気にする前に「何か改善できることはないか」、「問題は発生していないか」を見つめなおすのがいいでしょう。
製造業の直間比率
製造業で直接部門と間接部門に分けて直間比率を意識しはじめたのは、直接製造に携わる部門が付加価値を生み、間接部門はできるだけ少ない方がよいという認識だったからです。時代が移り変わって、間接部門が多くの利益を生み出すようになりましたが、呼び方は昔のままです。
間接業務のサービス低下のしわ寄せは以下の通りです。
・作りにくい設計
・使いづらい設備
・無理な生産計画
・無駄な在庫など
しわ寄せは後工程に来るため、最終工程を受け持つ現場には逃げ道はなく、なんとか品質、納期、数量を維持しようとします。後工程が直接の顧客である営業や設計業務のサービス低下は、販売不振やクレームに繋がり、利益低下へと繋がっていくでしょう。
間接業務のサービス低下が、後工程の誰かが使う時間やコストに影響を与える場合、出来る限り上流工程で時間やコストをかけたほうが会社全体の生産性は向上します。つまり、上流工程の仕事が順調な生産を支えているといえます。
間接部門の役割は以下の通りです。
・優れた製品やサービス開発や設計
・生産技術部門の技術力
・顧客満足を想像する営業部門の販売力
上記は利益の源泉であり、製造部門でも直接作業に携わる実行部隊よりも、製品やサービスの信頼性を追求する品質管理や顧客の要求にタイミングよく提供する生産管理の計画部隊の力が利益に貢献しています。人材を育成する人事や教育、資金調達と運用を支援する財務も会社の計画部隊です。
直接部門では計画された仕事を安いコストで作り出し、間接部門ではサービスレベルの向上にその役割があるといえるでしょう。
膨らみ続ける間接コスト
どんな会社でも、最近は間接コストが徐々に重くなる傾向がみられます。
たとえば、製造業でロボットを導入し、直接コストを抑えようとしたとします。
そのために生産技術部門が行う業務は以下の通りです。
・製造業務の工程分析
・要素作業分析
・工程改善
・要素作業の機械化設計
・試作
・テスト
・運転
・機械設備の保全メンテナンスなど
生産技術部門は間接部門であり、生産技術業務やロボットの高額な減価償却費など、間接コストは膨れ上がります。逆にロボットによる合理化効果が現れ、直接部門の製造業務は減少するでしょう。
まとめ
製造業と直間比率について解説してきました。以下、まとめになります。
・製造業における直間比率とは直接部門と間接部門の割合のこと
・間接業務のサービス低下が影響を与える場合、出来る限り上流工程で時間やコストをかけたほうが会社全体の生産性は向上する
・直間比率において、間接比率が高いことが問題なのではなく、収益に貢献していない人材が多く存在しているかもしれないことが問題
直間比率は直接部門と間接部門の割合ですが、これはあくまで収益を上げるための目安です。そのため、間接部門の割合が多いから収益が低くなっているとは限りません。
他社との直間比率を見比べる前に、自社で生産性を下げる問題は発生していないか、問題解決できる所はないかを一度模索するのがいいでしょう。