製造業では、ひとつの製品を作るために会社内に様々な部門が配置されています。製品が企画されてから出荷されるまでに様々な部門が関連し、物流に乗って各販売店へ運ばれ、製品が顧客の手元に届く仕組みになっています。各部門はそれぞれの役割が違います。今回は製造業の部門の役割について解説します。

製造業の部門と役割

様々ある部門は関連しあって、それぞれが歯車のように機能しています。部門の名称は会社によって異なり、主に以下の通りになります。

商品企画部

1つ目は「商品企画部」です。

商品企画部は製造業では花形であり、ゼロから新製品を企画する役割の部門です。難易度が高い部門ですが、自分が企画した製品が実際に世に中に出ていく達成感は他で体験は出来ません。
商品企画部は以下の視点から新しい製品を企画立案します。

・顧客のニーズ調査や現状の製品の不満点などを取りまとめる
・次の製品にはどんな機能を持たせるべきか
・販売価格はどのくらいか
・利益はどのくらいかなど

商品企画部は「顧客の視点」でモノづくりを考える仕事のため、実際に顧客の使用状況などを調査するため出張もあります。海外販売を行っている会社であれば海外出張もあるでしょう。

商品企画部の難易度が高いとされている理由は、以下のような高度なスキルが必要とされるからです。
・マーケテイングや損益計算といった幅広い知識
・顧客視点に立ったモノづくりを考慮しながら社内の様々な部署との折衝
・プロジェクトの進捗管理など
・人柄やコミュニケーションスキル
・ 普段から誰とでも仲良くでき公平に接する事が出来る

商品開発部

2つ目は「商品開発部」です。

商品開発部は商品企画部が企画立案した製品を具現化していく役割の部門です。技術の研究を常日頃から行っており、顧客のニーズや要望を満たせるような製品の開発に取り組んでいます。

商品開発部は以下のようなあらゆる視点から製品の良し悪しを判断します。
・実際の使用状況などを考慮した耐久試験
・十分な品質を保持できるか
・重大な事故などのリスクは無いかなど

商品開発部は工場で大量生産する場合の製造コストの計算や部品の調達などにも深く関わっており、以下のようなスキルを必要とされます。
・基礎開発以外の高度な理数・工学的な知識と技術
・地味な作業や実験が好き
・技術的にどう解決するかという技術者の意地
・不可能を可能にする前向きに取り組む姿勢
・技術的に不可能な要求も代替案として提示し何とか可能にする
・最低限のコミュニケーション能力
・モノづくりに対する情熱とプライド

生産技術部

3つ目は「生産技術部」です。

生産技術部は設計と製造をつなぐ役割の部門です。商品開発部が設計した製品図面を工場で実現可能かを検証したり、求められる品質にマッチしているかを技術的に解決します。

世の中に製品を送り出すには、厳しいテストに合格した製品を大量生産する必要があります。大量生産することで誰もが納得できる価格でその技術の結晶を享受することができます。

設計者の構想からさらに踏み込み、それを量産で実現するための方法を考えることが生産技術です。部門同士のコミュニケーションを支え、企業全体が協力する状態ができれば生産技術として良い働きが期待できます。

生産技術部に必要なスキルは以下の通りです。
・機械を使ってよりたくさんの製品をつくり出す方法を考えられる
・人と設備を最大限に活かしたスムーズな作業方法を考えられる
・できる限り全員の意見をまとめ、何が最善策か考えられる
・システムを導入する費用と効果を考え、具体的な計画を進めることができる
・異なる意見を持つ人を相手にしても、うまく立ち回ることができる(交渉力)
・やわらかい頭を持つ発想力
・いろいろな角度から判断できる
・モノづくりの発展に関わりたい気持ち

製造生産管理部

4つ目は「製造生産管理部」です。

製造生産管理部は、製品が企画され開発されて、実際に製造する役割を持つ部門です。商品開発部で開発した製品を実際に工場で大量生産しそれを管理しています。
会社によっては実際に工場で製品を作る「製造部」と生産量などを管理する「生産管理部」に分かれている事もあります

商品開発部や生産技術部との関り合いも深く、管理や流れ作業をする事が好きで、かつ忍耐力のある人が向いているとされています。

製造生産管理部で求められるスキルは以下の通りです。
・工場の作業工程をどうやったらより効率的に出来るかの検討力
・安全第一の取り組みを最優先で実践・管理能力
・組み立てる部品の調達や製造のコストや在庫の管理能力
・製造された製品の完成検査の責任能力
・工場で出る廃棄物や有害物質の管理能力など

営業部

5つ目は「営業部」です。

営業部は販売の役割を担う部門です。販売ルートの確保や販売戦略を練ることが主な仕事であり、ビジネス全体を広い視点で設計しています。交渉の時に販売台数や卸価格などを提示し、先方に納得してもらえれば契約を結ぶという業務になります。最も顧客と近い部署であるため、製品に関するクレームや要望などの情報もいち早く入手出来ます。また、店舗の販売スタッフの教育や店舗運営など、現場のサポートとして関わる事もあります。

営業部の中には「サービス部」という部署があります。サービス部では、製品のメンテナンスの方法を現場に教育したり、顧客が不具合を訴えた場合の対応業務を担っています。

営業部に必要なスキルは以下の通りです。
・クレームの対応力
・自身の目標に達成できないと給料に影響するため目標達成にやりがいを感じる考え方
・海外の代理店と販売数量や価格の交渉なども行える高い語学力と強い数字力
・コミュニケーション能力と交渉力が重視
・外交能力と語学力
・バリバリ働きたいという意欲

物流関連部署

6つ目は「物流関連部署」です。

物流関連部署は物流全般の役割を担っている部門です。工場でできあがった製品を営業部が契約した相手先へ配送します。国内だとトラックや船舶に積むための手配をしたり、海外だと飛行機に積んだりする手配を一括して行います。

営業部と非常に密接であり、「いつまでに」「どの製品を」「何個」「いくらで」などの営業部からの依頼のもとに動いている部門でもあります。企業によっては海外で規制されている材料などが製品に含まれていないかを細かくチェックする部署が一緒になっていることがあります。

物流関連部署に必要なスキルは以下の通りです。
・自社製品の出荷データを分析して死蔵品や滞留している製品をリスト化する能力
・営業部に対して販売促進による売り切りを提案できる能力
・提案活動でROA(投下資本利益率)に代表される収益性を高める能力
・提案・貢献しようとする想い
・データを読み取る力
・海外に出荷する際の通関などの管理能力

品質保証部(品質管理部)

7つ目は「品質保証部(品質管理部)」です。

製品の品質を作りこむのは設計開発・製造部門ですが、設計開発・製造部門の品質を作り込む仕組の信頼性を評価するのは品質保証部(品質管理部)です。

「設計開発部門が設計した製品構造」、「製造部門が製造工程で製造した製品」の品質が確かなものであると第三者としてお墨付きを与える部署です。社内に対しては、技術的知識を持った責任部門に調査と対策をさせる立場であるため「社内の裁判所」と呼ばれています。

品質保証部(品質管理部)は顧客へ品質を約束する役割を持った部門です。顧客に販売された製品が本当に顧客の満足いくものになっているかどうかや不具合が起きた製品の原因調査を行う社内でも非常に重要な役割を担っています。

工場の工程検査から顧客の使用状況などに目を光らせ、営業部で受けるクレームの中でも顧客のミスか製品の故障かの判断は困難を極める場合も多く、最終的には品質保証部が壊れた現品を調査することで原因を究明し、責任先を判断しなければいけません。

品質保証部によって責任があると判断された部門が以下のように責務を負います。
・開発部の責任と判断されれば開発部が原因対策を検討
・営業部と判断されれば顧客へ壊れた原因を説明し、使い方のアドバイスをするなど

品質保証部(品質管理部)に必要なスキルは以下の通りです。
・市場、社内での不具合原因調査と対策報告書の対応力
・製造コスト削減、短納期対応により品質が作りこまれず、絶えない不具合への対応力
・「達成感」が得られにくい中、維持し続けるモチベーション
・品質を確保するためのロジカルな社内の仕組を作れる
・人に嫌われても割り切ってズバズバ言える精神力で自分の業務を遂行できる力
・ミスや漏れを見つけやすくしてあげる仕組や手法(ツール)提供力
・人任せではなく、事実確認(データ収集)、原因特定、対策の立案(再発防止)できるサポート力
・一般的な統計的分析や、リスク抽出とデータの妥当性を客観的に確認し、批判するための手法の理解と応用力
・信頼性評価手法含めた国内、国際規格の知識
・事実と客観的データから、物事の本質をつかめる力
・バックデータを蓄積し、客観的に市場影響度、コスト、納期面から物事を判断・分析する能力
・大局的に物事を考えられるが、譲れない部分は譲らないマインド
・丈夫な強いメンタル
・真相を知るための好奇心

まとめ

製造業の部門の役割について解説しました。以下、まとめになります。

・製造業の部門には様々な役割があり、それぞれが歯車のように関連しあって機能している
・部門の名称や役割、業務内容は会社によって異なる場合がある
・製造業にはモノづくりが好きなこと、コミュニケーション能力、数字に強い力、客観的視野能力と提案力が必要

製造業では、ゼロからモノづくりが始まって私達の元に届けられるまで、様々な部門を経て行われます。
高品質なモノづくりはそれぞれの部門によって支えられており、私達が手にしている製品は多くの人の情熱や意志によってできています。メーカー系の製造業では部門によって役割と業務内容が大きく異なるため、すぐに転職するのではなく、社内で自分の可能性を広げることをオススメします。